SUMAU'S SCENE
アートのまちとして生まれ変わった
新しい黄金町
「黄金町バザール」は、2008年の横浜トリエンナーレの会期に合わせて開催が計画されたのがはじまりですが、その原点は、2003年の初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会という地元組織の設立にあります。
戦後から、黄金町には違法風俗店と麻薬取引などが横行していました。その状況を打開すべく、住民とPTAなどが立ちあがり、地域環境の浄化運動をはじめました。
そして2005年には神奈川県警が一斉取締り「バイバイ作戦」を始動。摘発後ゴーストタウン化したまちのあらたなイメージのまちづくりとして、横浜市の文化芸術創造都市構想とともに、「アート」のまちへと変貌を遂げていきました。
違法売春飲食店が建ち並んでいた横の高架下には、スタジオやカフェが入り、地域住民のコミュニケーションの場にもなっています。
そんな歴史をアートで表現しているのが、ドイツのヴェレナ・イセルさんの作品。
かつて売春宿だった建物は表に面した部屋は白く、洗練された色と光の抽象的なオブジェが配置されていますが、その奥の部屋は、実際に売春が行われていた畳の部屋。
暗い部屋の中に、寂しく置かれた人工の植物は、“偽りの愛”や“虚しさ”を表現しています。
そうした歴史をまったく感じさせないほど、まちにはモダンな建築と川沿いの並木道がつづき、秋の色づく葉たちに爽やかな風がやさしく吹いていました。
(写真・文/川野結李歌)
Profile:川野結李歌
横浜生まれ。大学卒業後(美術史専攻)、2013年よりフリーランスのカメラマンとして活動中。雑誌を中心に、ポートレート、映画、アート、建築など幅広く撮影。趣味は海外旅行、スケッチ、愛犬との昼寝。
黄金町バザール2015 まちとともにあるアート
「黄金町バザール」は、横浜市中区黄金町エリアでアートによるまちの再生に取組む、NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターが主催するアートフェスティバル。「街」という日常の空間を舞台に、2008年より毎年秋に開催され、国内外のアーティスト、キュレーター、建築家らを招聘して、地域とアートが共存する「アートによるまちづくり」を目指している。「黄金町バザール」をきっかけに、若手クリエイターの実験の場として街が開放され、地域コミュニティに新たな可能性が生み出されている。
会場:京急線「日ノ出町」駅から「黄金町」駅間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外ほか
期間:2015年10月1日(木)~11月3日(火・祝) 10月26日(月)は休場日
問い合わせ先:NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター
横浜市中区日ノ出町2-158
電話:045-261-5467
http://www.koganecho.net/contents/koganecho-bazaar/