SUMAU'S SCENE
旧朝香宮邸の邸宅美術館で
エミール・ガレの名品を観る
アール・ヌーヴォーを代表するエミール・ガレの、自然をモチーフにしたガラスや陶芸、デザイン画の作品展が、東京都庭園美術館で開催中。旧朝香宮邸のアール・デコ様式の建物に飾られたガレの作品は、より一層輝き、二つのヨーロッパ装飾様式が互いに響き合う、その華麗なアートの世界に心躍ります。
アール・デコ様式の東京都庭園美術館と
アール・ヌーヴォーのガレのアートが響き合う
東京都庭園美術館は、かつての旧朝香宮邸であり、日本で唯一完全な形で現存するアール・デコ様式の名建築です。
2014年秋、約3年に渡る大規模な改修工事を終え、新館も加わりリニューアルオープンしました。
改装後はじめて足を踏み入れましたが、その素晴らしさに、心が躍り、目がらんらんと輝きはじめるのを止めることはできません。
館内は、多彩かつ大胆ながらも落ち着いた色味と図柄の壁紙やタイルで装飾が施され、部屋ごとにまるで異なる装い。
散りばめられたモザイクタイル、手描きの森、彫られた花柄、金が混ざり込んだ大理石、水族館のように魚が泳ぐラジエーターカバー、そのすべてが可愛らしく、部屋の隅々まで、冒険するように目が追いかけます。
いま開催されているのは、「ガレの庭」と題されたエミール・ガレの展覧会。
ガレは、花・植物・蝶・昆虫などをモチーフにした繊細で優美な作品で知られるガラス・陶器・木工家具のデザイナー。19世紀末から20世紀初頭にかけて隆盛した装飾様式「アール・ヌーヴォー」を代表する一人です。
今回の展示では、100点以上の工芸品と50点以上のデザイン画・型紙を観ることができます。
展示がここまで素敵なのは、アール・デコ様式の東京都庭園美術館に、アール・ヌーヴォーのガレの作品が飾られているところにあります。
時系列からみると、アール・ヌーヴォーは1890年代、アール・デコは1920年代に隆盛した様式です。
アール・ヌーヴォーが植物のもつ有機的な曲線をモチーフにしているのに対し、アール・デコは、近代化が進む時代の流れに即した機能性を重視したシンプルなデザインが特徴で、円・直線・ジグザグが多く用いられています。
異なる時代の、異なる様式にもかかわらず、その芸術性が見事に調和。
まるで音楽を奏でるように響き合っているのは、東京都庭園美術館のアール・デコのモチーフに植物が多く使われているからです。
朝香宮邸のインテリアをデザインしたアンリ・ラパンは、竣工まで一度も日本を訪れなかったそうですが、朝香宮邸の広大な庭の自然に想いを馳せて着想したであろうことが想像できます。
植物学者でもあったエミール・ガレと、インテリアデザイナーのアンリ・ラパン、二人の根底にある、自然への賛美が共鳴しあっているのです。