Senlis, Photo © Centre Pompidou, MNAM-CCI, Dist. RMN-Grand Palais /Jacqueline Hyde
心の「目」で見たままを描く強さ。
パリ「ナイーブ・アート」展。
「ナイーヴ・アート」という言葉をご存じだろうか。 「ナイーヴ」といっても「繊細で傷つきやすい心」の意味ではない。そのように使われるのは日本くらいで、語源になった英語の「naive」、フランス語の「naïve / naïf」は、もともと「素朴な」「自然な」という意味だ。美術史の中で「ナイーヴ・アート=素朴派」といえば、19世紀から20世紀にかけて、とくに美術の教育を受けずに…
アンリ・ルソーのジャングルに
命を吹き込んだパリ自然史博物館。
パリでアートといえばすぐイメージするのは、市内に数ある美術館やギャラリーだろうか。しかし、歴史上多くの画家や彫刻家を生み出し、芸術の都とまで言われてきたパリには、芸術家にインスピレーションを与えてきたたくさんの「風景」が残されていて、それもまたアートなパリを感じる要素になっている。 その中のひとつ、今回はパリ5区にある「パリ植物園」と「自然史博物館」をご紹介したい。 …
忘れられた「後ろ姿」に光をあてる。
パリ、ブールデル美術館「BACK SIDE」展。
私たちはふだん、人のどこを見ているだろうか。さまざまな答えがあるだろうが、やはり視線は正面や顔に向けられがちで、後ろ姿はどうしても二の次になる。なにしろ私たちは、自分で直接背中を見ることさえできない。 しかし、ファッションの世界では前も後ろも同じように重要視される。創り手は「後ろ姿」を真剣に飾り立て、あるいは露わにし、強調する。絵画、写真、彫刻などの世界でも、背中、後ろ姿…
美術館では見られない画家の素顔。
芸術と生活に全てを捧げた藤田嗣治、最後の家。
パリから電車とバスを乗り継いで約1時間。エソンヌ県の小さな村ヴィリエ・ル・バクルは、パリをちょっとだけ離れた郊外とは思えない自然豊かな風景が広がる。初夏ともなれば鮮やかな新緑が太陽の光に輝き、鳥たちはさえずり、美しい季節を謳歌する。 ヴィリエ=ル=バーク…
絵本から出てきたような光景。
パリ「アンブレラ・スカイ・プロジェクト」。
春の歩みが遅かったパリに、ようやく初夏の陽射しが見られるようになってきた。5月・6月頃といえば、本来ならフランスがいちばん輝く季節。木々の葉は蒼く輝き、庭園をバラやひなげしなどの花々があざやかに彩り、空は気持ちのいい光に満たされる。暗い冬から解放された人々が、まるで冬眠から醒めた動物たちのように続々と街へ自然へと出てきて、この美しい季節を謳歌する。 そんな夏の始まりの時期…
「ナビ派」- 印象派とピカソの間で、
美術界の静かな革命を試みた男たちの話。
パリのサンジェルマン・デ・プレ地区の南には、リュクサンブール庭園という広大な緑地がある。面積は約22.4ヘクタール。東京でいえば日比谷公園の約1.4倍の広さがあり、綺麗な噴水や数々の彫刻、美しい花々が季節を彩り、ポニー広場やテニスコートまである。昼はカルチェ・ラタンの学生達や近隣のオフィスの人々がランチをしたり、家族がピクニックをしたり。夕方には仕事帰りに待ち合わせた恋人たちが愛を語りあい、ジョギ…
「トーキョー」の名はなぜ?
パリの超巨大アート拠点 Palais de Tokyo
パリでアートを鑑賞するというと、多くの人にとってはルーブル美術館やオルセー美術館などで見られるクラシックな名画や、印象派の時代の画家たちのイメージが強いかもしれない。しかし、もちろんパリにも現代アートを見る場面はたくさんある。いやむしろ現代アートの世界でも「芸術の都」であろうと、国やパリ市、アート関係者たちが力を注ぎつづけていると言ってもいい。その象徴ともいえる存在が、エッフェル塔にもほど近い現代…
アートが生まれる場とホテルがひとつに。
ドローイングの未来を見るパリの新名所。
「ドローイング」「デッサン」と聞くと、多くの人には美術作品を制作するための「素描」のようなイメージがあるかもしれない。現代アートが表現やその手法においてあらゆる方向に広がっていった今、ヨーロッパやアメリカのアート界では、美術家の手わざが描くこのドローイングという表現に注目が集まり、重要なジャンルに位置づけられている。そのための専門のギャラリーやアートフェア、つまりそれに特化した市場があるくらいだ。…