SUMAUレストランクルーズ
神楽坂の奥に届いた
ブルターニュからのメッセージ
【神楽坂】
大事な人たちと大切な時間を楽しむために訪れたいダイニング&バーまで。
お料理はもちろん、空間、雰囲気、おもてなしまでSUMAU読者の感度にフィットする
“とっておき”レストランへとナビゲートします。
text by Jun OKAMOTO
Photographs Takemi KATO
元料亭という和空間をイノベーション
シードルとブルターニュ料理のレストラン
Vol.15 ル ブルターニュ バー ア シードル レストラン@神楽坂
夏直前の蒸し蒸しする気候は、シュワシュワした飲みものが恋しくなります。ビールやシャンパーニュもいいけれど、今注目したいのはシードル。フランスの北部ブルターニュ地方が名産のシードルは、りんごから造る低発泡酒。実は世界的にもシードル人気が上昇中で、日本でも新進気鋭のワイナリーが様々なスタイルで国産シードルに取り組むなど、ブームの兆し。本場ブルターニュでは300種類以上のシードル用りんご品種から、それぞれの造り手が個性あふれるシードルを生み出しているといいます。味わいもライトなものから、樽熟成した重めのものまでワインのようにバラエティ豊か。2~8%程度と低アルコールなので軽やかに飲めるところも気軽で、ランチのお供や暑い日の昼下がりにもぴったり。
日本で初めてのシードルをテーマにしたレストランが神楽坂にオープンしたのは去年のこと。路地に面した元料亭という風情ある民家を改装したスペースは、なんとも落ち着く空間です。古い本やレコードが飾られた、居間のようにくつろいだ雰囲気も魅力的。緑が青々としたこの季節は、縁台を使ったテラス席が特等席です。
シードルとの相性を考えた料理は、ブルターニュ地方の郷土料理であるガレットやコトリアードなど。本場そのままではなく、ブルターニュ料理のエッセンスを取り入れつつも、この店ならではのアレンジを加えています。この料理の監修を手掛けたのは、ブルターニュにある「ラターブル・ブレッツカフェ」のシェフ久高章郎さん。フランスの食糧庫といわれるブルターニュで、豊富な食材を生かした新しい料理を発信する久高シェフは、2013年にミシュランひとつ星を獲得しています。久高シェフのフィルターを通したメニューは、他にはないオリジナリティに飛んでいて楽しませてくれます。
扱っているシードルは約20種類。料理に合わせてシードルをカップリングするなど、通な楽しみもここなら可能です。60種類ほど揃っているワインはフランス中心。一部国産のワインや日本酒もあり、どれも料理とのマッチングをきちんと考慮してオンリストされています。
庭付きの民家という神楽坂らしいロケーションと優しく地味深いシードルの味わいが、まさに癒し効果満点。うっとうしい梅雨の時期にこそ行きたいレストランです。