SUMAUレストランクルーズ

2014.11.26

美しい器と澄んだ味わいに心がゆるむ
ありそうでなかった和と中華の融合
【荒木町】

早いもので今年も残すところ1ケ月。何かと気忙しい時期だからこそ、家族や気の置けない友人たちと美味しいものを食べて英気を養いたい……。今月は、そんなシーンにぴったりな中華の新店を紹介します。和のエッセンスを取り入れた中華料理、その繊細な味わいを、絶妙に組み立てられたコースで堪能してください。

 

和のエッセンスを取り入れた

重すぎない中華料理をコースで

 

Vol.32 の弥七(のやしち)@荒木町

 

「の弥七」。このちょっと不思議な響きの店名を持つ、中華料理のお店が

密かに話題を呼んでいます。オープンしたのは2014年7月。

 

パワフルでエネルギッシュな中華料理ではなく、

日本らしい季節の移ろいや香りをにじませたフレッシュな中華料理のスタイルは、

食べる人にどこかほっと安心感を抱かせるからでしょうか。

またたくまに人気店となりました。

 

「こんな中華料理があってもいいのかなと思っています」

と控えめに語る店主山本眞也さんは、三田の「桃の木」出身。

中華料理の名店でしっかりと技術を磨いて、本格中華のベースを作り上げました。

 

その上で、中華料理に欠けていると感じた、季節感、器で魅せる設え、

素材の味を繊細に引き出す、などの日本料理の感性を取り入れたといいます。

 

2

 

コースでは、「麻婆豆腐」や「黒酢の酢豚」といった定番の中華の皿の合間に、

中華では普通は使わない刺身を使ったり、淡い味わいの皿を差し込んだり、と

ひとつのコースの中にくっきりとメリハリのある流れを作りだしています。

 

それが口中の油を流す役割や、ひと呼吸つくゆとりとなって、

次の皿をまた新鮮に味わう刺激となります。

食べる人を飽きさせず、中華だからといって重たくなり過ぎないところが絶妙のさじ加減。

 

“中華料理はこうあらねば”という思い込みを軽々と飛び越えて、

自由に羽ばたいている山本さんの料理。それはたとえば、伝統を乗り越えて

新しい発想を試みる本場中国の一流の料理人たちのように、

ガストロノミーの入口に立っている予感を感じさせます。

 

山本さんはそもそも日本酒好きとあって、料理に合うさらりとした日本酒をおすすめしています。そこもまた中華と和がうまくバランスをとっている感じ。

 

割烹料理店のように清潔で、小さくて居心地のいいここは、ゆっくり食事をするにはうってつけ。

年の瀬に、親しい友人と美味しいものを囲みたい。そんなときにこそおすすめしたい1軒です。

 

自家製からすみ 中国の白酒をベースにしたハマナスの花のリキュールを 使った自家製からすみ。大根の塩漬けと一緒にお茶漬けで味わう。以下、料理はすべて9,000円のコースより。

自家製からすみ

中国の白酒をベースにしたハマナスの花のリキュールを
使った自家製からすみ。大根の塩漬けと一緒にお茶漬けで味わう。以下、料理はすべて9,000円のコースより。

 

黒酢の酢豚 豚肉だけのシンプルな酢豚。大ぶりの豚肉はしっとり 柔らか。散らしたザクロの酸味がいいアクセントに。

黒酢の酢豚

豚肉だけのシンプルな酢豚。大ぶりの豚肉はしっとり
柔らか。散らしたザクロの酸味がいいアクセントに。

 

広東風鯛のふくら蒸し 香菜の香りがいい鯛の姿蒸し。中にけんちんと言われる豆腐や根菜を入れた具を詰めている。たっぷりの薬味とよく混ぜて。

広東風鯛のふくら蒸し

香菜の香りがいい鯛の姿蒸し。中にけんちんと言われる豆腐や根菜を入れた具を詰めている。たっぷりの薬味とよく混ぜて。

 

料理と合う日本酒もおすすめ。左は軽快な純米吟醸 「参乃越州」、右は大吟醸生酒の「久保田 翠寿」。

料理と合う日本酒もおすすめ。左は軽快な純米吟醸

「参乃越州」、右は大吟醸生酒の「久保田 翠寿」。

 

店内のテーブルには塗の半月盆が置かれ、割烹料理店のような和の設え。

店内のテーブルには塗の半月盆が置かれ、割烹料理店のような和の設え。

 

 

 

10

 

の弥七 

住所:東京都新宿区荒木町8 木村ビル 1F

電話:03-3226-7055

営業時間: 11:30~13:30(LO) 17:30~21:30(LO)

定休日:日曜

席数:13席

メニュー:昼は定食1,200円が2種類、麻婆豆腐定食1,500円、お弁当2,500円。夜はコース6,500円、9,000円、12,000円。

 

(取材&文・岡本ジュン 写真・加藤タケ美)

 

PROFILE  岡本ジュン

フリーランスエディター・ライター。レストラン、料理、旅行、ライフスタイル、健康などの取材を中心に執筆。とくに飲食店、生産者、ワイン、日本酒など、食べ物に関する取材は15年以上に渡って数多く担当。モットーは“おいしい料理とお酒には逆らわない”。

 

※掲載価格は税別価格です(2014年11月26日現在)

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