SUMAUレストランクルーズ
静岡のおでんと日本酒で紡ぐ
ここだけの蕎麦屋酒
沿線にある住宅街のお店は、アクセスはよくないけれど、その分だけくつろげる空間やその場所だけの独特の空気感が味わえるもの。近所ならなおさら気安く、わざわざ出かけていくのなら、知らない街を散歩する密かな楽しみがあります。
Vol．53 green glass @中井
名店出身の店主が打つ絶品蕎麦と
地元・静岡の美味しい酒とおでんが名物
「グリーングラス」という新緑を思わせる爽やかで美しい店名の由来は、蕎麦の実の緑の意味と、
グラスというお酒の盃をかけています。さらに
「競馬が好きなので、馬の名前も…」と、恥ずかしそうに笑うのは店主の関根美徳さん。
住宅街の細い道を歩いていくと、「道を間違えていないかしら？」と少し不安になった頃、
忽然と現れるのが、今年2016年6月にオープンしたここ。
蕎麦と静岡おでんと日本酒のお店です。
関根さんは静岡出身。静岡で蕎麦修行をしていたが、蕎麦屋で酒と肴を楽しむ“蕎麦前”と
いう江戸文化に魅せられて、東京の名店「眠庵」、銀座「流石琳」などで経験を積んで独立しました。
スタイルは東京の蕎麦屋ながら地元・静岡への愛も強く、蕎麦と静岡おでんをメインにしたといいます。
日本酒も静岡の酒蔵のみを扱い、ビールは静岡のクラフトビール「ベアードビール」というこだわり。
掘りごたつ式のゆったりと大きなテーブルに座って、まずは静岡おでんを食べながら、
日本酒をゆっくりいただくのがここでの最上の過ごし方。
黒板に書かれた、「わさび漬け」や「おひたし」、味醂粕の「こぼれ梅」など、
お酒のアテもシンプルで潔く、好感が持てます。
「体に負荷がかからないものをお出ししたいですね」という関根さん。
静岡おでんに欠かせない黒はんぺんも、化学調味料や添加物のないものを探して使っている
といいます。
そばは「もりそば」のみで、2種類の異なる産地の蕎麦の盛り合わせ。
年間を通して約10か所の産地の農家から取り寄せるものが中心です。
この日は、香りがたって上品な千葉県産と弾力のある力強い富山産で、
異なる蕎麦の魅力を楽しむ趣向になっていました。
目指すのは「表情のある蕎麦」という関根さん。ツルリとのど越しのいい蕎麦よりも、
穀物らしい風味や肌触りを感じる蕎麦を打ちたいといいます。
さて蕎麦を食べたら終わりと思っていたら、驚いたことに、
その先にもお楽しみがありました。
実はここ、古い洋酒が好きという関根さんが集めたコレクションがあり、
蕎麦の後にいただくことができるのです。
月日がまろやかに磨いたヴィンテージの洋酒を最後に１杯いただいて、
気持ちよく仕上げられる蕎麦屋酒。これはなんとも粋なはからいです。
静岡おでん おまかせ盛り合わせ 1,200円
黒はんぺん、牛すじなどが入り、串にささっているのが
静岡おでんの特徴。魚粉と青のりをかけるのもお約束。
もりそば2種盛り 850円
日替わりで打つ産地の違う蕎麦2種類の盛り合わせ。
大盛り、少な目などお腹の具合に合わせて調節もできる。
つきあいのある静岡の酒蔵を中心に約30蔵のお酒を揃えている。
広い店内は席数が少なくゆったりと寛げる。
green glass
グリーングラス
住所: 東京都新宿区上落合3-28-9
電話：03-6908-9259
営業時間:12:00 ~ 14:00 17:30~ 23:00 ※お蕎麦がなくなり次第終了
定休日:月曜の昼・日曜
席数：16席
メニュー:日本酒500円~、焼酎500円~、わさび漬300円、こぼれ梅350円、出汁巻玉子850円、鴨モモ肉ロース煮1,400円、静岡おでんの単品はこんぶ200円、黒はんぺん300円ほか。
（取材＆文・岡本ジュン 写真・加藤タケ美）
PROFILE 岡本ジュン
“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター＆編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、旅行などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業（？）が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/
※掲載価格は税込価格です（2016年8月現在）
