SUMAUレストランクルーズ
ちょっと気になるあの街に
またひとつ名店が誕生しました
【錦糸町】
今までは人気シェフのレストランといえば都心が当たり前でした。でも最近は中心から離れたエリアにできることが増えています。そんなエリアのひとつ錦糸町では、2015年6月、南インド料理の新旗手として注目される料理人がレストランをオープンしました。
名シェフが愛情と工夫を凝らす
南インド料理の注目レストラン
Vol39.Venus@錦糸町
「料理が好きですか?」
そう聞くと、オーナーシェフのベヌゴパールさんは途方もなく優しい笑顔になりました。
ああ、この人は本当に料理が好きなのだなあ。
この笑顔からしみじみと料理への愛が伝わってきます。
この店は2015年6月3日にオープンしたばかり。
明るい白壁と爽やかなブルーが施された店内は、ハワイのローカルなダイナーを思わせる開放感があります。流れている時間もハワイのように、もといインドのように、のんびり、ゆったり。食事を楽しむインドの人が多いこともあって、なんだか現地の人気食堂にいる気分。
営業前のオープンキッチンの中で、シェフはあちらこちらを磨いたり、点検をしたり。生き生きと動いている姿を見ているだけでほほえましい気分になります。
ベヌゴパールさんは、かつてマドラスと呼ばれていた南インドの街・チェンナイ出身。料理の手ほどきは、幼いときから料理人であるお母さんから受け継いだと言う生粋の南インド料理の料理人です。
やがてチェンナイのホテルでコックを務め、日本にやって来ると、南インド料理の老舗であるアジャンタの厨房に入ります。その後、銀座の名店「ダルマサーガラ」で腕を振るうことになりました。
そして2015年、自身の店を日本にオープンしました。メニューは、ターリー(定食)とカレーが中心で、単品メニューはこれからおいおい増やしていく予定。なにしろオープンしたてですから! 南インド料理で「ティファン」と呼ばれる軽食があるのが、日本のレストランでは珍しいかもしれません。
朝食に食べることが多いというティファンには様々なタイプがあります。
そのひとつが、ドーナツ型に揚げた「ワダ」やクレープみたいな「ドーサ」。いずれも生地は豆からできていて、スパイスのきいた「サンバル」や「ココナッツチャトニ」を付けて食べるのが定番です。
ベヌゴパールさんは、「南インド料理は香りの料理」といいます。確かに、テーブルに料理が運ばれてくると、スパイスのいい香りがまっさきに飛び込んできました。
南インド料理の特徴である、生のカレーリーフをしっかりきかせているのはもちろん、それぞれのスパイスの香りがビビッドに立ち昇ります。料理を食べれば、スパイスの香りと清らかなうまみが、体の中を鮮烈な風のように通り抜けます。熟練の技と豊かな感性を併せ持つ料理人の力が、ヴェヌスの料理には漲っていました。
象徴的なのは、日本の食材もどんどん取り入れてしまうこと。
スパイスの使用法、調理法、レシピも南インド料理そのものですが、インド料理では意外と思われるようなもやしだったり、ごぼうだったりという食材も、自在に料理に取り入れてしまいます。
新たにスタートした自身の店で、そしてこの東京で、
南インド料理を巡るシェフの冒険はまだまだ続いているのです。
Venus
住所:東京都墨田区錦糸2-6-11
電話:03-6284-1711
営業時間:11:00~14:30 17:00~21:30(LO)
定休日:火曜
席数:28席
メニュー:ランチバイキング1,000円 、ディナーはチキン・カレー1,000円、チキン・キーマ1,000円、白身魚カレー1,200円、マトン・ビリヤニ1,300円など。
※ 禁煙
(取材&文・岡本ジュン 写真・加藤タケ美)
PROFILE 岡本ジュン
“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、旅行などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/
※掲載価格は税込価格です(2015年6月現在)