SUMAUレストランクルーズ
おまかせコースで繰り出す
土鍋ごはんでいただく中華
個性的なお店が増えて、バラエティが広がってきた東京の中華料理。今回は2015年後半にオープンしたばかりの注目の1軒をご紹介します。
中華料理のエッセンスに
日本の美意識と旬をプラス
Vol.45 銀座やまの辺 江戸中華@銀座
東京の中華料理が楽しくなっています。
日式中華の良さが再認識されたり、中国少数民族の料理にスポットを当てたり、
中華料理に日本人らしい感性を盛り込んだり。
バラエティが広がって、料理人ひとりひとりの個性が表れたお店が増えてきました。
2015年8月に銀座にオープンした「銀座やまの辺」もそのひとつ。店主・山野辺仁さんは
天厨菜館「銀座店」の料理長、「天王洲アイル店」の総料理長を経てこちらを開店しました。
国産の良質な食材を使った山野辺さんの料理は、「日本人が作る中華」というスタンスに立ち、
日本の四季を織り込みながら中華の技法やレシピを生かした独自の世界を造り上げています。
料理はおまかせコースのみ。まず小さな丼がでてくるところから始まります。
これは最初に軽くお腹を満たして、後は落ち着いてゆっくりお酒と料理を楽しんで欲しいという趣向。
茶懐石のもてなしの心に通じる日本の美意識を感じさせます。
おまかせということでメニューはその都度変化しますが、小さな器でいただく、蒸し物、点心、
煮物などがリズミカルに繰り出されるコースは、懐石料理のように変化に富んでいます。
スペシャリテのひとつは「よだれ牛」。その料理のことを考えると涎がでるという意味で名づけられた、四川料理の「よだれ鶏」をアレンジした料理です。
牛肉の赤身の美味しさやピーマンの香りと食感を前面に押し出し、食材をストレートに表現したこの料理はまさに山野辺さんが思い描く中華を表す一皿といえます。
坦々麺に使われているのは乾麺の稲庭中華そばです。創業350年の佐藤養悦本舗が作り上げた中華料理のための稲庭中華そばは、稲庭の伝統技法を使って、干すことで生の麺にない旨みと食感を出しています。
まろやかな胡麻風味のスープには、ザーサイの代わりに刻んだいぶりがっこが入っているので、
香りや旨みが柔らかく上品な仕上がり。
どの料理もこんなふうに日本の上質な食材に置き換えることで、やまの辺らしいニュアンスを感じさせてくれます。
また、土鍋で炊いた白いご飯を出すのも日本人の心を掴む必殺技。
麻婆豆腐や魚の蒸し物など、ちょっと白いご飯が欲しいなと思う料理には、
リクエストすると一口ずつご飯が饗されるのです。山野辺さんの同級生が千葉県で作っているというお米は、自身も稲刈りを手伝うこともあるという愛着のある食材です。
命の出汁である上湯(シャンタン)には、最上級の羅臼昆布を加えているので、
料理にはなんといえない優しい滋味があります。それでいて食材の魅力をシンプルに表現し、中華料理ならではのボリュームも兼ね備えているところが魅力。
こんなほっくりとした中華料理で体の芯から暖まって、
寒い季節に負けないエネルギーを養いたいですね。
銀座やまの辺 江戸中華
ぎんざやまのべ えどちゅうか
住所: 東京都中央区銀座8-4-21 保坂ビル B1F
電話:03-3569-2520
営業時間: 16:30~23:00(LO22:00) 土曜は昼間の予約のみ
定休日:日曜・日曜・祝日・不定休
席数:12席
メニュー:おまかせコース10,800円(税込)~。特選コース30,000円(ともに税込・要予約)。グラスワイン1,000円~、紹興酒(グラス)800円~。
(取材&文・岡本ジュン 写真・貝塚 隆)
PROFILE 岡本ジュン
“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、旅行などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/
※掲載価格は表示のあるもの以外は税別価格です(2015年12月現在)