SUMAUレストランクルーズ
キンと冷えたお酒と肴
瑞々しいおそばで涼をたぐる
【西麻布】
text by Jun OKAMOTO
photographs by Takashi KAIZUKA
深夜でも本格的なおそばが食べられる
西麻布の隠れ家ダイニング
Vol.5 蕎麦と酒 旭@西麻布
今年3月に西麻布に登場した、日本酒と料理が充実したそば店。赤いちょうちんがトレードマークのエントランスを入ると、大きなそば打ち台が設えてあり、その奥には意外なほど広いフロアが続いています。手前はガラスの衝立に仕切られたテーブル席、奥はソファ席のダイニング、石庭風の坪庭を配した広い個室もあり、どこもゆったりと空間をとっているのでまるでレストランのような雰囲気。いわゆる街のおそば屋さんとは異なり、大切な人との食事にも心おきなく使える場所です。
その日に食べる分だけ打つそばは、二八、十割、田舎の3種類。二八と十割はしなやかな細打ち。田舎は食べ応えのある太い麺で、噛みしめるとそばの力強い風味が広がります。つゆは、色の濃い「かえし」を使った江戸前の辛つゆがせいろ用、「白かえし」という関西風の「かえし」を使い、豊かなお出汁の風味を生かしたかけつゆ用と、おそばによって2種類の「かえし」を使い分けています。
板わさやだし巻き卵といった定番はもちろん、お刺身や天ぷら、野菜料理や炭火焼きなど、料理のメニューも幅広く充実。名物は鴨を使った「鴨せいろ」です。国産の鴨は、脂がのっていても、サラリとしてけしてしつこくないのが特徴。それでいて噛みしめると香りと味わいが濃厚に感じられます。また同じ鴨を使った「鴨葱しゃぶしゃぶ」も人気メニューのひとつ。
平日は朝5時まで営業しているので、深夜に本格的な手打ちそばが食べたいときにも貴重な一軒。ついつい夜更かししがちな夏の夜には、遅めの時間におそばでクールダウンするのもよさそう。その時は、きれいな味わいの純米吟醸酒とおいしい肴で、そばの前にお酒と肴を楽しむ「そば前」という大人の文化を楽しんでみたいものです。