SUMAUレストランクルーズ
神保町に現れた意外な新店
暖かな空気が心地よいイタリアン
【神保町】
レストランと街の関係性には不思議なつながりがあります。レトロな喫茶店や庶民的な酒場のイメージがある神保町に、ちょっと意外な大人が通えるイタリアンが登場。ワイン1杯から、料理一皿からでも歓迎というその店は、早くも住人達の注目を集めています。
VOL.58 girotondo @神保町
ナチュラルなワインと
日本の旬が出会う豊かな時間
2016年12月1日。神保町に1軒のイタリアンがオープンしました。
名前はジロトンド。イタリア語で「輪舞」という意味だそうです。
店主は、江戸川橋・バリックトウキョウを始め人気店でソムリエを務めてきた村上裕一さん。料理長は村上さんの気の合う友人であり、頼れる料理人でもある原耕平さん。
ガラス張りのお店は外から様子が分かるので、ウエルカムと言われているような入りやすさがあります。実際、「前を通りかかってふらりと入って欲しい」と村上さん。
木の温もりを取り入れたフロアは、落ち着いたテーブル席とお一人さまも利用しやすいカウンターがあ
り、使い勝手も良さそうです。
二人の個性なのか、どこかのんびりした空気が流れていて、新店でありながら気負いが無くとても自然
体。そのムードが村上さんが選ぶナチュラルなワインにぴたりと合っていて、なんだかずっと昔からあるお店のようにすら思えてきます。
今、ナチュラルなワインは日本中、いや世界中で注目を集めていますが、村上さんとこうしたワインとの出会いはずっと前。20年ほどもさかのぼるイタリア滞在時代でした。
大きなセラーにはナチュラルなワインがぎっしり。イタリアワイン中心ですが日本ワインも扱っていこうという意気込みで、これから少しずつ増えていくそう。
そんなワインに呼応するように、料理にも自然体の緩やかさを感じます。
「イタリアと同じように、地元の旬の素材を使って季節の料理を考えていきたい」という原さんは、日本の食材を積極的に取り入れています
村上さんと二人で食材探しの旅にでることもあるそうで、そこから縁が繋がった生産者が徐々に増えているといいます。
例えば、スープに浮かべた卵は農場を訪ねて、その人柄や鶏の育て方に共感した生産者のもの。リゾットに使うお米はパラリとしたイタリア米ではなく、あえてもちもち系の魚沼産こしひかり。原さんの親友が営む農家から送られています。
リゾットのご飯は焼いて提供され、まずはそのままいただきます。次にスープをかけてリゾットに、という仕掛けも楽しい限り。なにより驚いたのは、そのスープがアゴ(トビウオ)出汁であったこと。
新潟佐渡はアゴを使う食文化圏で、ジロトンドのアゴもそこから仕入れています。
香り豊かで香ばしく滋味深いアゴ出汁をイタリアンで。その発想がとても新鮮です。
イタリアで北部ピエモンテと南のナポリにいたという原さんは、北と南の食材の使い明けも上手。
「食材ありきで、南の料理にしたり、北の料理にしたり。その素材を生かす調理法を自分の引き出しから引っ張り出していきたい」と話します。
まさに輪舞を踊っているかのようなゆったりした時間が流れるジロトンド。
原さんの食材への愛を感じるメニューと、そこに合わせる村上さんの絶妙なワインのチョイスが今後どう展開していくのかとても楽しみ。
季節を追うごとに、豊かな時間を提供してくれそうです。
girotondo
ジロトンド
住所: 東京都千代田区神田神保町1-36-1 新神保町ビル 1F
電話:03-5244-5245
営業時間:17:00~24:00 [土] 15:00~24:00
定休日:日曜
席数:17席
メニュー:本日のコース4,800円、シェフおまかせコース8,000円、前菜1,600円~、スープ800円~、パスタ1,600円~、主菜2,800円~、コペルト200円
(取材&文・岡本ジュン 写真・加藤タケ美)
PROFILE 岡本ジュン
“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、旅行などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/
※掲載価格は税別価格です(2017年1月現在)