SUMAUレストランクルーズ
からりと揚がった天ぷらと
秀麗なそばに心が踊る
【浜町】
カウンターの天ぷら専門店はちょっと敷居が高いけれど、それがおそば屋さんだったならば意外と気軽。そんな両方の“いいとこどり”スタイルの人気店で、美味しい天ぷらとおそばをどうぞ。
vol.57 浜町かねこ@浜町
蕎麦店でいただく
端正なカウンター天ぷら
サラリと衣をくぐらせて才巻海老が鍋の中の黄金の液体へ放たれると、シュワっと美しい泡を立てて天ぷらへと姿を変えていきます。
浜町かねこの白木のカウンターに陣取って、ひとつひとつ目の前で揚げてもらう天ぷらを口へ運ぶのは至福の時間。
こう書くとまるで天ぷら専門店のようですが、実はこちらはおそば屋さん。
店主の金子泰史さんは、天ぷらが美味しいことで知られる神楽坂「蕎楽亭」の出身で、師匠譲りの端正な天ぷらが、そばとともにこの店の柱になっています。
開店は2015年8月。営業して1年余りの間に、天ぷらの単品メニューも増えました。「そばはちょっと細くなりましたね」と照れたように笑う金子さん。着実に進化して、名店への道を歩んでいます。
いわゆるお蕎麦屋さんの、衣がぽってりした天ぷらとは異なり、金子さんの天ぷらは衣が薄く軽やか。天つゆよりも塩でいただくと、その繊細な味わいがよくわかります。
築地から仕入れる海老や穴子を始め、夏の鮎に代表される、カウンターの水槽に泳ぐ季節の魚も見逃せません。
またお酒や気の利いた酒菜も豊富で、ゆるりと蕎麦前を楽しむにはぴったりです。
定番の「生ゆば刺し」や「鴨ロース」、「会津の馬刺し」などのほか、季節ものの魚介や野菜を使ったメニューも多く、何を食べようか目移りしてしまうほど。
日本酒や焼酎はよく吟味されていて、酒好きの心をくすぐります。盛り合わせだけでなく、旬の野菜を中心に単品の天ぷらも用意されているのもうれしいところ。
エッジのたった細いそばはしなやかでのど越しがよく、お酒の後でもするりと胃に収まってくれます。寒い夜には温かいそばもおすすめで、とくに「蕎楽亭」ゆずりのスパイシーなカレーそばも見逃せません。
何かと慌ただしくなりがちな年末年始。カウンターでいただくそばと天ぷらで、少しだけ緊張をゆるめる時間を持つのも大人の贅沢です。
住所: 東京都中央区日本橋浜町3-7-3
電話:03-4291-3303
営業時間: 17:30~21:00 火曜~金曜 11:30~14:00 17:30~21:00 土曜11:30~14:30
定休日:日曜 祝日
席数:30席
メニュー:昼/ざるそばと小カレーそばセット1,200円 海老天ざる1,600円 夜/ざるそば900円、むぎめおと(そば、冷麦の相盛り)1,000円、牛すじの煮込み860円、季節の天ぷら盛り合わせ2,400円
(取材&文・岡本ジュン 写真・加藤タケ美)
PROFILE 岡本ジュン
“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、旅行などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/
※掲載価格は税込価格です(2016年12月現在)