SUMAUレストランクルーズ
伝統をセンスで遊ぶ
仲良しトリオの新進和食
【岩本町】
秋が深まるごとに、冬にかけて美味しいものが到来する季節になりました。旬の食材を堪能するならばやはり和食は最上。そこで、ラフだけど料理は本格的かつ新鮮なアイデアで勝負する人気の割烹をご紹介します。
Vol.54 あそび割烹 さん葉か@岩本町
郷土食や伝統食材を取り入れつつ
今の時代に合った風通しのいい料理を提案
「菜豆腐っていうんですよ」。
料理長の小峰太一さんがそう説明してくれたのは、コースの最初に出す小鉢三品のひとつ「自家製の豆腐の味噌漬け」。
「菜豆腐」は、旬の野菜を細かく刻んで入れた豆腐で、野菜の彩が白い豆腐に生えて美しい、宮崎県・椎葉村の郷土料理。ここではその菜豆腐を麦味噌に漬け込んで酒肴に仕立てています。
生産者とのつながりを大事にする小峰さんが使うのは、どれも思い入れが深い食材ばかり。
独特の食文化を持つ山間の椎葉村で採れた山菜や郷土食の干し野菜、対馬のベテラン猟師が捕った質のいい鹿肉など、その背景まで細やかに目を配り、丁寧な仕事で自分の料理に生かしています。
“あそび割烹“と名付けているだけに意外なアイデアで楽しませてくれますが、料理は潔いほどシンプル。滋味豊かな手作りの素材をアクセントに使っているのも印象的です。
例えば自家製納豆もそのひとつ。歯ごたえを残すため納豆の発酵をやや控えめに仕上げているそうで、食べると豆の食感や風味がまだ鮮烈。そこに納豆らしい発酵の香りがふわりと加わり、和え衣のマスカルポーネと調和します。
また昔ながらの灰汁で固めるこんにゃくも驚きです。まるでくずもちの様なフルフルの食感からインスピレーションを得て、こちらはなんとデザートに変身させています。
2016年4月にオープンした「さん葉か」の店名の読みは「さんばか」。友人3人でいつか店をやろうという夢を実現したといいます。オープン前は仲良し三人組でよく飲み歩いていたそうで、そのときに「さんバカ」と言われたのが、このちょっとユニークな店名のきっかけとか。
料理は「おまかせ酒肴」と食事やデザートが付いた「おまかせ料理」の2つのコースで、内容は日替わり。そのほかに本日のおすすめを単品で追加できます。
最上の席はカウンターで、会話のやりとりから食べたい食材やメニューを即興で考えてくれることもしばしば。自由な発想で展開するコースはまさに“あそび”がいっぱいです。
料理のお供には充実した日本酒がおすすめ。好みを伝えれば、店長の市瀬賢治さんが料理に合わせて上手にナビゲートしてくれるので相談を。
和食店ほど堅苦しくなく、料理のクオリティは居酒屋以上。
和という枠にとらわれることなく、自分が美味しいと思うものを出していきたいという小峰さん。その意気込みがこれからどう開花していくのか、ワクワクさせてくれるお店のひとつです。
あそび割烹 さん葉か
あそびかっぽう さんばか
住所:東京都千代田区東神田2-6-2 タカラビル2F
電話:03-3865-7575
営業時間: 11:30~13:30 17:30~24:00(LO 23:00)
定休日:日曜
席数:28席
メニュー:ランチ980円(売り切れ次第終了):※ランチコースは前日までの予約制 夜:おまかせ酒肴2,500円、おまかせ料理5,000円、ほか食事などの単品もあり。
(取材&文・岡本ジュン 写真・加藤タケ美)
PROFILE 岡本ジュン
“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、旅行などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/
※掲載価格は税込価格です(2016年9月現在)