SUMAUレストランクルーズ
涼をもたらす夏そばで
しばし暑さを忘れてゆるりと
【笹塚】
新そばの季節にはまだ少し早いけれど、残暑きびしき日々には、やはり冷たいそばが食べたくなります。休日の昼には、さっぱりとしたそば屋のつまみと日本酒、〆のそばで至福のひとときを。
和モダンの憩いの空間で
ゆったり過ごすそばや酒の時間
Vol.40 石臼挽き手打蕎麦 蒼凛@笹塚
蒸し蒸しと暑い休日。昼からしっぽりそばと酒というのはなんという贅沢でしょうか。
笹塚の住宅街にある蒼凛は、天井が高く、ゆったりと席を配置したくつろげる空間。この設えが休日の昼からでもそば屋酒を誘います。
竹を配置したエントランスを入ると、静かで凛とした空気感が漂っていました。
どっしりとしたテーブルとイスは、民芸風でありながら少しモダンなテイストを感じさせます。
カウンターがあるので、一人でも利用しやすいのもうれしいところ。
ご主人の齋藤貴廣さんは、根津の「よし房 凛」出身。数ある飲食店の中からそば屋を選んだのは、手仕事のできる店をやりたかったからだといいます。
石臼でほどよく粗挽きしたそばは、ピシッときれいに輪郭がたった端正なたたずまい。こだわり過ぎるのは好きではないという齋藤さん、
「食べて素直においしい蕎麦が理想です」といいます。
和食の経験がある齋藤さんの手腕はおつまみに生かされています。
たとえば「穴子の白焼き」。自分でさばき、ふっくらと焼き上げた穴子は、繊細な味わいの中に噛みしめると上品な脂が滲みます。そこに米の旨みをたくわえた日本酒を飲めば、最高の蕎麦前に。
「焼のり」、「焼き味噌」などの定番の蕎麦前に加えて、「鴨 ハツ焼」や「海老と帆立のあんかけ揚蕎麦」など、気になるおつまみも多く、何を食べるのか迷うのもまた楽しい時間です。
蕎麦のお品書きに目をやると、夏の時期は冷たいひやかけが豊富です。あたたかいつけ汁の「きのこせいろ」や「きつねせいろ」も心惹かれるメニュー。天ぷらの種類も豊富にあって、穴子天かそれともごぼう天か、などうれしい悩みは尽きません。
カラリと揚がった天ぷらは、使っている素材も吟味されています。大きな海老はむっちりと身が詰まって甘みも十分。季節の野菜は衣の中に閉じ込められた香りが口の中に広がります。
日本酒は、数は多くないけれど冷酒からお燗までバランスのいい品揃え。齋藤さんの地元の友人が造っているという、山形の「楯野川」は、蕎麦によくあうきれいな味わいです。
伝統的なそば前でちびりとやるのもいいですが、お料理とお酒にちょっとこだわりがあるというお店で、ゆるりとした時間を過ごすのは格別なひととき。過ぎゆく夏の厳しい暑さを冷たい蕎麦がしばし忘れさせてくれます。
石臼挽き手打蕎麦 蒼凛
いしうすびきてうちそば そうりん
住所:東京都渋谷区笹塚2-30-9 シャトレー笹塚1F
電話:03-3373-8374
営業時間:11:30~15:00 17:30~21:00 日曜11:30~15:00
定休日:月曜日
席数:25席
メニュー:せいろ780円、冷かけそば きざみそば850円、ごぼう天そば980円、焼酎500円~、日本酒600円~。
https://www.facebook.com/sourin.sasazuka
(取材&文・岡本ジュン 写真・加藤タケ美)
PROFILE 岡本ジュン
“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、旅行などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/
※掲載価格は税抜価格です(2015年7月現在)