SUMAUレストランクルーズ
美しい器と澄んだ味わいに心がゆるむ
ありそうでなかった和と中華の融合
【荒木町】
和のエッセンスを取り入れた
重すぎない中華料理をコースで
Vol.32 の弥七(のやしち)@荒木町
「の弥七」。このちょっと不思議な響きの店名を持つ、中華料理のお店が
密かに話題を呼んでいます。オープンしたのは2014年7月。
パワフルでエネルギッシュな中華料理ではなく、
日本らしい季節の移ろいや香りをにじませたフレッシュな中華料理のスタイルは、
食べる人にどこかほっと安心感を抱かせるからでしょうか。
またたくまに人気店となりました。
「こんな中華料理があってもいいのかなと思っています」
と控えめに語る店主山本眞也さんは、三田の「桃の木」出身。
中華料理の名店でしっかりと技術を磨いて、本格中華のベースを作り上げました。
その上で、中華料理に欠けていると感じた、季節感、器で魅せる設え、
素材の味を繊細に引き出す、などの日本料理の感性を取り入れたといいます。
コースでは、「麻婆豆腐」や「黒酢の酢豚」といった定番の中華の皿の合間に、
中華では普通は使わない刺身を使ったり、淡い味わいの皿を差し込んだり、と
ひとつのコースの中にくっきりとメリハリのある流れを作りだしています。
それが口中の油を流す役割や、ひと呼吸つくゆとりとなって、
次の皿をまた新鮮に味わう刺激となります。
食べる人を飽きさせず、中華だからといって重たくなり過ぎないところが絶妙のさじ加減。
“中華料理はこうあらねば”という思い込みを軽々と飛び越えて、
自由に羽ばたいている山本さんの料理。それはたとえば、伝統を乗り越えて
新しい発想を試みる本場中国の一流の料理人たちのように、
ガストロノミーの入口に立っている予感を感じさせます。
山本さんはそもそも日本酒好きとあって、料理に合うさらりとした日本酒をおすすめしています。そこもまた中華と和がうまくバランスをとっている感じ。
割烹料理店のように清潔で、小さくて居心地のいいここは、ゆっくり食事をするにはうってつけ。
年の瀬に、親しい友人と美味しいものを囲みたい。そんなときにこそおすすめしたい1軒です。
の弥七
住所:東京都新宿区荒木町8 木村ビル 1F
電話:03-3226-7055
営業時間: 11:30~13:30(LO) 17:30~21:30(LO)
定休日:日曜
席数:13席
メニュー:昼は定食1,200円が2種類、麻婆豆腐定食1,500円、お弁当2,500円。夜はコース6,500円、9,000円、12,000円。
(取材&文・岡本ジュン 写真・加藤タケ美)
PROFILE 岡本ジュン
フリーランスエディター・ライター。レストラン、料理、旅行、ライフスタイル、健康などの取材を中心に執筆。とくに飲食店、生産者、ワイン、日本酒など、食べ物に関する取材は15年以上に渡って数多く担当。モットーは“おいしい料理とお酒には逆らわない”。
※掲載価格は税別価格です(2014年11月26日現在)