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絵画史上もっとも有名な少女像に会える
至上の印象派展 ビュールレ・コレクション
印象派、ポスト印象派の最高傑作が揃う、『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』が日本上陸。5月7日まで東京・六本木の国立新美術館で開催されている。世界最高峰と言われるビュールレの名画コレクションが来日するのは27年ぶり。およそ半分の出品作が日本初公開、その見どころをダイジェストでご紹介しよう。
「ルノワール、絵画史上、最強の美少女」と
「セザンヌ、奇跡の少年」の豪華共演
本展覧会で最大の見どころは、ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》。ルノワールはこどもの肖像画も多数残しているが、本作は「絵画史上もっとも有名な少女像」とも評される代表作だ。
ドレスや髪、ゆるやかに重ねられた手は、印象派の絵画らしいタッチで描かれている。一方、目や鼻、口元といった顔の造作はまつ毛の1本まで細かく描き込まれていて、まるで美しい少女の表情にだけピントを合わせたようにも見える。
また、セザンヌの肖像画の最高傑作《赤いチョッキの少年》も来日。こちらはイレーヌとは異なり全体がすばやいタッチで構成されているが、物憂げな表情を浮かべた少年の顔と右腕はハイライトが当たったように画面から浮かびあがり、目を奪う。
ドガ、マネ、ルノワール、ファン・ゴッホ、ゴーギャン、モネ、セザンヌ……。19世紀後半から20世紀にかけてフランスを中心に発展した印象派、ポスト印象派の巨匠たちは、日本にもファンが多い。
印象派の作品を中心に構成した展覧会は日本でも数多く開催されているが、今回の展覧会のいちばんの特徴は、たったひとりのコレクターによって蒐集された作品群であるということだ。コレクターの名は、エミール・ゲオルク・ビュールレ。ドイツに生まれ、スイスで成功を収めた実業家である。
ビュールレは大学で美術史を専攻したこともあり、個人的な好みに加えて作家や作品の流れも汲みながらコレクションを形成していった。日本の浮世絵に大きな影響を受けた印象派の画家たちの作品に魅せられたビュールレのコレクションを、21世紀の日本で展示するということも、「美術」という大きな文脈のなかでは意味があるのかもしれない。
2020年にはチューリッヒ美術館に全作品移管
日本で見ることができる最後の貴重な機会
ビュールレのプライベート・コレクションは質が高いことで知られている。本展覧会に展示されている64点も、傑作中の傑作ばかり。しかも、約半数が日本初公開の作品だ。
日本初公開の作品のなかでもっとも注目されているのが、スイス国外への貸し出しも初めてというモネの《睡蓮の池、緑の反映》だ。縦200×横425cmという大作が、展示会場の最後の1室に1点だけ展示されている。
見上げるほどの大きなカンヴァスから、やわらかな空気感が伝わってくる。モネが終の棲家の庭を舞台に200点以上描いた「睡蓮」のなかで最晩年に手がけたこの一作は、ビュールレがとくに気に入っていた作品でもある。
ゴーギャン、マネ、セザンヌ、ピサロ、ピカソなど、有名な作家の初来日作品がこれほど一気に揃う展覧会はほかにない。しかも、ビュールレ・コレクションの全作品は、2020年に完成予定のチューリッヒ美術館に移管されることが決まっている。
至高のビュールレ・コレクションをまとめて鑑賞できるのは、これがラストチャンス。この機を逃さず、ぜひ会場に足を運んでいただきたい。
絵画作品はすべて
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)
Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)
エミール・ゲオルク・ビュールレ
ドイツに生まれ、スイスに移住したエミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956)。戦前から戦後にかけて実業家として富を築く一方、生涯を通じて美術品の収集に情熱を注ぐ。ルノワール、モネなど、フランス印象派とセザンヌ、ファン・ゴッホなどポスト印象派を中心に、世界的なプライベート・コレクションの一つとなる。これまでヨーロッパ以外でそのコレクションがまとまって公開されたことはほとんどなく、日本での公開も27年ぶりとなる。
至上の印象派展 ビュールレ・コレクション
会期:2018年2月14日(水)~5月7日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
休館日:火曜日〈ただし5月1日(火)は除く〉
時間:10:00~18:00〈毎週、金・土曜日、4月28日(土)~5月6日(日)は20:00まで〉
※入場は閉館の30分前まで
料金:一般1600円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話:03-5777-8600 (ハローダイヤル)