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2017.11.27

フィンランドにまつわる〝100のできごと〟
クリスマスシーズンに「FIN/100」を体感

クリスマスを待ちわびるアドベントカレンダーのように、サンタクロースの国、フィンランドのモノ・コトを紹介する体験型のポップアップショップ「FIN/100」が、12月の六本木ミッドタウン内21_21 DESIGN SIGHTにオープンする。今年はフィンランドが独立してちょうど100年。インテリアブランド、アルテックをはじめ、今注目のフィンランドブランドが一堂に会して、独立100周年を祝うポップアップイベントが開かれる。

 

アルヴァ・アアルトの名作、L−レッグを用いたシリーズを独立100周年の今年、再定義してフィンランドの自然を想起させるカラーを選んだ「フィンランド100モデル」が登場。ストーンホワイトの脚部に4色のリノリウムのマットなテクスチャーがシック。

 

フィンランド独立100周年を祝う「FIN/100」

北欧を代表するデザインブランドが集合

 

北欧デザインの雄、フィンランド。じつはコーヒーの消費量においても世界をリードしていることをご存知だろうか。また知る人ぞ知るヘビメタファンの多い国でもある。

 

そんなフィンランドの多様性を紹介する「FIN/100」。スタートする12月6日はフィンランドの独立記念日に当たる。今年はまた独立100周年を祝うアニバーサリーイヤーでもある。

 

同展はアルテックやアラビアなど、フィンランドデザインを牽引してきた老舗ブランドに加え、テキスタイルやバッグの新進ブランドの作品を販売するポップアップショップである。フィンランドにまつわるさまざまなジャンルの「100のできごと」を体感できる、イベントの集合体でもあるのだ。

 

開いた本のように124度の角度の付いた2面のミラーにトレイが附属する繊細なデザインのアルテックの鏡のシリーズ。デザイナーはダニエル・リーバッケン。

 

アイノ・アアルトによるリーヒティエプラントポット。1937年の発表当時は製品化されなかったこのデザインも、アニバーサリーイヤーの今年、満を持して登場。

 

FIN/100が掲げるテーマは「ニュートラル」。

 

独立して以降、現在に至る100年の歴史の中で、フィンランドは地政学的にはもとより、国内政治や教育、社会構成に至るあらゆる分野でこの民主的で平等というニュートラルな価値観を追求してきたのだという。

 

立憲君主制の多い北欧諸国において、王家を戴かない若い国であることも関係しているだろうか。

 

そのバランス感覚はフィンランドデザインの特色というだけでなく、日々の生活の隅々にまで息づいている。このフィンランドを象徴する価値観、ニュートラルが同展に通底するコンセプトとなっている。

 

つまり、会場では有名ブランドの傍らに申し訳程度にその他のモノ・コトが押し込められている、などというはずはなく、デザインプロダクトを中心とするモノと並んで、フラワーアレンジメントやジン(フィンランドで醸されている)のワークショップなどのコトも平等に紹介されているのだ。

 

 

アルヴァ・アアルトのフラワーベースに、イッタラで人気のバード バイ トイッカシリーズ。

 

(左)ヨハンナ・グリクセンのノルマンディコレクション。ジオメトリックなパターンながら天然素材のテキスタイルからは暖かみが感じられる。
(右)デザイナー本人も、会期中に来日してトークイベントを開催予定。

 

カウニステ フィンランドの特徴は、伝統的な生産技術とフレッシュなカラーやデザインの掛け合わせ。

 

クリスマスにゆかりの深いフィンランドを

多面的に楽しめる機会は見逃せない

 

FIN/100に参加する8つのデザインブランドについて触れておこう。

 

まずは北欧デザインを代表するセラミックとガラスのブランド、アラビア/イッタラ。ともに国の歴史より長い伝統を持つ老舗だが、そのスタイルはまさにニュートラル。カイ・フランクやアルヴァ・アアルトらのデザインは今なお古びることなく私たちの暮らしを彩ってくれる。

 

フィンランドと言えば欠かせないのがテキスタイル。今回は3ブランドが揃い、幅広いバリエーションに目移り必至だろう。デザイナー自身の来日も予定されているヨハンナ・グリクセンに、新進のカウニステ フィンランド。ラプアン カンクリでは鹿児島睦とのコラボアイテムが人気だ。

 

アート&デザインのジャンルからはフローラ オブ フィンランド。フィンランドの自然をそのまま切り取ったかのような作品が新鮮に映る。

 

フィンランド語で雪を意味するルミは実力派のデザイナー2人が立ち上げたバッグブランド。カラーパレットのようにバリエーション豊富なレザーを使ったさまざまなサイズのバッグは、使い勝手は言うまでもないがアフォーダブルなところも魅力のひとつ。

 

(左)フィンランドの豊かな植生をそのままインテリアに。フローラ オブ フィンランドのアートピース。
(右)ルミの柔らかなレザーのオーロラジュエリーパースはバリエーションがありすぎて選ぶのが難しいほど。エコフレンドリーなものづくりからはフィンランドらしさが感じられる。

 

(左)デザイナーのダニエル・リーバッケン。会期中に来日してトークイベントを行う予定。
(右)フィンランドの伝統的なクリスマスオーナメント、ヒンメリ。会期中にワークショップが開催され、このヒンメリづくりを体験できる。

 

そしてトリを務めるのはもちろん同展主催のアルテックである。アアルトらによって「モダニズム文化の促進」を目的に設立されたこのモダンデザインの金字塔は、ブルレック兄弟やヘラ・ヨンゲリウスらと協働しつつ、今ではコンテンポラリーブランドとしてデザイン界に重要な位置を占めている。

 

最近オープンしたジュエリーブランド、チャン・ルーの旗艦店では安藤忠雄建築にアルテックのインテリアが調和し、硬質な空間に北欧デザインの暖かさが柔らかく寄り添って、居心地のいい雰囲気に満ちていた。

 

そして会場の21_21 DESIGN SIGHTも言わずと知れた安藤建築の名作のひとつ。そのギャラリー3がFIN/100展の会場である。東京ミッドタウンのイルミネーションに彩られた小径を辿って訪れる同展が、クリスマスにゆかりの深いフィンランドを多面的に味わえる機会となるのだから見逃す手はない。

 

もし仮に北欧デザインにあまり関心はない(果たしてSUMAU読者にそんな奇特な方がおられるとは思えないが)としても、心沸き立つホリデーシーズンにぜひフィンランドのクリスマスを体感しに訪れてみたい。

 

(文/入江眞介)

 

 

FIN/100(ふぃんひゃく)

会期:2017年12月6日(水)~12月25日(月)

会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3

開館時間:10:00~19:00

休館日:会期中無休

観覧料:無料

住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内

https://www.fin100.jp/

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