アーバンインフォメーション

2017.11.17

石巻・牡鹿半島の総合芸術祭を東京で再構成
『リボーン・アートフェスティバル東京展』

『海は森からうまれる, 2017』/宮永愛子

東日本大震災から6年たち、今夏、東北初の総合芸術祭として、「アート」、「音楽」、「食」を発信して話題となった『リボーン・アートフェスティバル』。宮城県石巻市・牡鹿半島で開催された展示は9月10日に幕を閉じたが、東京・神宮前のワタリウム美術館に場所を移し再構成した展覧会『リボーン・アートフェスティバル東京展』が12月10日まで開催されている。

 

『浜と手と脳, 2017』/青木陵子+伊藤存。

 

石巻市街地・牡鹿半島で繰り広げられた世界を

ワタリウム美術館という「箱」に凝縮

 

2011年に発生した東日本大震災から6年が経過し、甚大なダメージを受けた東北の町にも平穏な時間が戻ってきている。しかしそれは、震災前と同じ日々の暮らしが取り戻されたわけではなく、「生まれ変わった日常」があるということ。

 

生まれ変わりつつある東北で、「再生」をテーマに開催されたのが「アート」と「音楽」と「食」を楽しむ『リボーン・アートフェスティバル』だ。津波により壊滅的な被害を被った宮城県石巻市街地と牡鹿半島を中心に、国内外から現代アーティストが参加して展示を行い、有名シェフが地元の食材を使った料理を提供し、さまざまな音楽イベントが行われた。

 

「ほかでは出会うことにできない価値観や人と出会い、新しいつながりを産む」フェスティバルは、「東北」というフィールドを飛び出して東京のワタリウム美術館で再構成されることとなった。

 

(左)『”White Discharge(建物のようにつみあげたもの/石巻) #1, #2″ , 2017』
(右)『ボイルド空想(マテリアルのユーレイ/石巻) 」のための習作, 2017』 共に金氏徹平

 

石巻市街地・牡鹿半島では、豊かな自然や建物など「エリア」と密接に関係しながら、広いエリアに点在するように展示が行われた。東京展では、東北に展示された作品の一部がワタリウム美術館という限定された空間のなかに集められている。

 

現地で体感するのとは異なる展示だが、「そこで何が起きていたのか?」を知り、考え、観る者自身の「Reborn」を見つけることができるはずだ。

 

『SIDE CORE+EVERYDAY HOLIDAY SQUAD rode work, 2017』

 

アーティストたちが捉えた「Reborn」の

多様な表現が一堂に会する東京展

 

39組の現代アーティストが出展した東北の「本祭」は、クルマやバスで移動しながら作品を巡る構成になっていた。「場」に意味を持たせた作品、体感型の作品が多かったのも特徴だ。

 

東京展では、17組の作家のオブジェ、映像、インスタレーション、写真などの作品と、14組の作家のドローイングが集中的に展示されている。現地と同様にルドルフ・シュタイナーのドローイングが特別展示されている点も、ワタリウム美術館らしい。

 

東京の会場でもっとも目を引くのはSIDE CORE+EVERYDAY HOLIDAY SQUADの<<RODE WORK>>だ。工事現場の照明を組み合わせた巨大なシャンデリアのようなオブジェクトが吹き抜けの空間で光を放ち、工事現場を中心とした東北の映像作品と一体になってリアリティとファンタジーを行き来させる。

 

展示に使われている「仙台銘板」社の点滅ライトには、電波時計の信号を応用した同期点滅機能が組み込まれている。明滅の間隔を同期するシステムなので、石巻でも東京でも同社の同期システム機能付き製品の光るタイミングは同じ。東京に居ながら東北を体感できる、と言ったら大げさだろうか。

 

『燈話, 2017』/さわひらき

 

キュンチョメの映像作品<<空蝉Crush>>も興味深い。石巻の人々が、「生まれ変わったらなりたいもの」を叫びながら鏡の上に置かれた蝉の抜け殻を手のひらで潰していく。「空蝉(うつせみ)」とは蝉の抜け殻のことで、日本では昔から現世の象徴、生まれ変わることの象徴でもあったというが、やさしく押し潰す人もいれば勢いよく叩き潰す人もいる。

 

「ミンミンゼミになりたい」と言う子ども。「アイドルになりたい」と言う幼女。「水になりたい」、「ハワイのフラダンサーになりたい」、「そこそこ人気のあるアイドルになりたい」と、さまざまな「もしも」が紡がれると同時に、次々に空蝉が潰されていく。「生まれ変わりたくない」という願いもまた、痛切な真実だ。

 

アーティストたちが石巻・牡鹿半島を訪れて、感じて、表現した「Reborn」に、あなたはなにを想うだろうか。

 

(取材・文/久保加緒里、撮影/今井紀彰)

 

『起こす, 2017』/島袋道浩

 

リボ―ンアート・フェスティバル 東京展

会期:2017年10月 20日(金)~ 12月10日(日)

会場:ワタリウム美術館

住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6

電話:03-3402-3001

休館日:月曜日(12月4日は開館)

開館時間:11時より19時まで(毎週水曜日は21時まで延長)

入館料:大人1000円/学生(25歳以下)800円/ペア割引:大人2人 1600円、学生2人1200円

http://www.watarium.co.jp

 

〈関連イベントを開催〉

「目黒浩敬氏の2日間だけのレストラン」

石巻の海と山の恵みを使った現地の「Reborn-Art DINING」のフードディレクターの目黒浩敬氏が、会期中に2日間だけワタリウム美術館でスペシャルメニューを用意。

http://www.watarium.co.jp/exhibition/1710reborn_return/images_1710/food.pdf

 

「お茶会『Big Sky Little Moon』空と付きの茶会《バリーの小屋》」

石巻で公開された2畳の小屋の小さな茶会を、ワタリウム美術館で特別開催。

http://www.watarium.co.jp/exhibition/1710reborn_return/images_1710/tea2.pdf

関連記事一覧