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2018.05.14

東京ミッドタウンをバラと花で彩った
「フラワーアートアワード2018」

毎春、東京ミッドタウンのパブリックスペースを花の作品で飾るアート展が今年も開催。バラの生花をふんだんに使ってスケールの大きな作品で競う「フラワーアートアワード2018」や、生花以外の花で構成するディスプレイコンテスト「フラワーアートショーケースアワード2018」など、多彩な作品が展示された。ゴールデンウィークの前半から来場者の目を楽しませた作品をご紹介しよう。

 

(上)「フラワーアートアワード2018」最優秀作品賞(グランプリ)の『KABUKIMONO』(吉本雄一さん)。
(下)優秀作品(準グランプリ)の『花が咲くこと 花鳥風月』(Ryuki Yasuiさん)。

 

「日本美」をテーマに、バラの生花で魅せた

フラワーアートの祭典

 

サントリー美術館、21_21デザインサイト、フジフィルムスクエアなどアート&デザインを満喫できる施設を擁し、パブリックスペースにもアート作品が点在する東京ミッドタウン。4月24日(火)から4月29日(日)の6日間、メインショッピングエリア「ガレリア」でフラワーアートの祭典「フラワーアートアワード2018」の展示が行われ、多くのゲストの目を楽しませてくれた。

 

東京ミッドタウンでの開催9年目となる今年のテーマは「日本美」だ。ゆったりとした空間を、床面積2.7㎡、高さ290cm以内というスケールの大きなフラワーアートで飾る。花材をバラの生花に限定しているのも特徴のひとつ。

 

デザインの完成度、バラが活き活きとしているか、オリジナリティや第一印象などの基準で審査が行われ、吉本雄一さんの『KABUKIMONO』が最優秀作品賞(グランプリ)/エールフランス賞/フランス大使館賞を受賞した。大きな松の樹の下で見得を切る袴姿の侍を、バラで表現した作品だ。

 

長野県の堀木園芸のバラは、「KIZUNA」をメインに「ジャパネスク オータムルージュ」と「ジャパネスク キャラメラ」を組み合わせている。

 

(左)グランプリに輝いた『KABUKIMONO』と吉本雄一さん。「アート・フローラル国際コンクール」に出場。
(右)準グランプリのRyuki Yasuiさんの『花が咲くこと 花鳥風月』。日本人らしい繊細さや奥ゆかしさを表現した。

 

吉本さんは、2012年にも最優秀作品賞を受賞し、日本代表として出場したフランスの「アート・フローラル国際コンクール」でもグランプリを獲得した経験を持つ。しかし栄光を手にしたことで満足せず、表現者としてのさらなる高みを目指してフラワーアートアワードに出展し続けてきた。

 

モチーフとして選んだ侍には、前回のグランプリ受賞以降6年間、悔し涙を流し続けながら挑戦することを止めなかった吉本さん自身が強く投影されている。

 

「死ぬ場所を見つけるために生きている――そんな“侍魂”を表現したいと思いました。バラの活け込みはもちろんですが、活き活きとした侍の姿を袴のリアルな表情にも注力しました」と吉本さん。

 

「身体」はバラと木で抽象的に表現しているのだが、袴だけリアルな点も印象的。布製の袴にウレタンを塗り込んで固めてから、着物の雰囲気が出るような塗装を施している。吉本さん自身の足の長さや角度を測り、細かなシワまで精密に再現したそうだが、しっかりと大地を踏みしめる姿に、自らの理想を追求し、信念を貫きとおす吉本さんの姿が重なって見えた。

 

(左)3位の『今宵の月に何思ふ。』(徳永真里子さん、湊谷敦子さん)。
(右)4位の『ポンポン菓子』(大川蹉賀さん、森香桜さん、北内翆潤さん、曽根樹賀さん)。

 

(左)5位の『結(ゆい)』(大薗勢津子さん、野澤彩子さん、山田浩美さん、石間千賀子 さん)。
(右)6位の『次元の波』(佐久かずみ さん、加藤恵子さん、小宮山由美さん、橋本直貴さん)。

 

arbluemのRyuki Yasuiさんは、『花が咲くこと 花鳥風月』で日本人らしい繊細さや奥ゆかしさを表現して準グランプリ/東京ミッドタウン賞を受賞。

 

濃いブラウンでペイントした流木が、森の中の倒木を思わせる。八方に広がるつる植物が、伸びやかな印象を与える。バラは、くすんだダークピンクの「ブラックティー」を活かすため、「レッドエレガンス」などビビッドな色合いのバラを配した。

 

動と静、死と生。どこか輪廻転生を感じさせる雰囲気に仕上がっている。

 

「シャイだけど芯の強さがある。自然に対する畏怖がある。日本人の持つ美徳を、バラと流木で表現できたと思っています」(Yasuiさん)。

 

一方、バラの魅力を最大限に引き出し、フラワーアレンジメントの美的表現を競う「フラワーアレンジメントコンテスト」も開催。グランプリには金甫璟さんの「こころ」、準グランプリには朱蜀娟さんの「凛」が受賞した。

 

(左)ローズアレンジメントコンテストのグランプリ作品『こころ』(金甫璟さん)。
(右)準グランプリ作品は『凛』(朱蜀娟さん)。

 

東京ミッドタウンの柱ショーケースに並ぶ

「日本美」をテーマにした作品は、6月1日まで鑑賞できる

 

近年、ヨーロッパを中心にあらためて「ジャポニスム」に注目が集まっている。パリでは、本年7月から『Japonismes2018』と題した複合型の文化芸術イベントが開催される。日本のアートに焦点を当てた大規模なイベントとしては、27年ぶりのことだ。

 

そのような年に、フラワーアートアワード実行委員会が提示したテーマは「日本美」。

 

東京ミッドタウンのガレリアでは、各フロアの柱ショーケースを飾るディスプレイコンテスト「フラワーアートショーケースアワード2018」と「花器〝作家〟エキシビション」も同時に開催された。

 

(左)「フラワーアートショーケースアワード」グランプリ作品の『美技』(清水敦美さん)。
(右)準グランプリの『雅』(中山純さん)。

 

(左)3位の『花誘う 嵐の庭の ゆきならで ふりゆくものは 我が身なりけり』(中村晃子さん)
(右)4位の『Zipangu の気配』(渡辺あしなさん)。

 

「フラワーアートショーケースアワード2018」の多くの作品は、金糸や銀糸を使った織物、染め物、水引、千代紙や和紙など日本独自のマテリアルを使い、枯山水や家紋、折り紙など日本ならではの意匠を採り入れている。小さな空間につくり出された「日本美」に、ふと足を止める外国人観光客が多いのもうなずける。

 

出展された23作品のなかから、見事グランプリに輝いたのは、日本を代表する花「桜」と日本を代表する匠の技「江戸切子」で、自然の美と工芸の美を共存させた『美技』だ。作者の清水敦美さんは、2年連続のグランプリ受賞。自身の切子制作体験から生み出された作品だという。

 

(左)「花器作家 エキシビション」での作品。『Compound eye』(西本至孝さん)。
(右)『Finlay ~ 花象嵌 ~』(寿笑さん)。

 

(左)『白萩釉鎬花入』(陶工房 津島友里恵さん)。(右)『肖 – sho -』(滝川ふみさん)。

 

(左)『vain flower』(渡部晃子さん)。(右)『水面 -MINAMO -』(中村謙介さん)。

 

(左)『はるごころ』(森比呂美さん)。(右)『花の器』(林拓緯さん)。

 

また、「花器作家 エキシビション」では、花のある暮らしをテーマにして「花器」アートの魅力を再発見。注目の器アーティストの作品はどれも力作揃いで、見応えのある展示となっている。生花の魅力も、花器のもつ芸術性があってこそ映えるといえるだろう。

 

プリザーブドフラワーやアーティフィシャルフラワーなど、生花以外の「花」で表現した「フラワーアートショーケースアワード2018」の作品と「花器〝作家〟エキシビション」は、6月1日(金)まで観賞できる。

 

初夏のひととき、東京ミッドタウンでフラワーアートと花器に触れてみてはいかがだろう。

 

(取材・文・久保加緒里)

 

フラワーアートアワード2018

フランス「アート・フローラル国際コンクール」第19回日本代表選考会

会場:東京ミッドタウン・ガレリア

会期:2018年4月25日(火)~4月29日(日)

※同時開催の「フラワーアートショーケースアワード」と「花器〝作家〟エキシビション」は、6月1日(金)まで柱ショーケースに展示

問い合わせ:フラワーアートアワード事務局

http://www.plains1.com

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