アーバンインフォメーション
ケタちがいな発想をアートにしたら……!
「そこまでやるか」壮大なプロジェクト展

「“ダイナミック”というより“破天荒”」――そんな表現がピッタリはまるようなアート作品ばかりを集めた異色の展覧会が21_21 DESIGN SIGHTで開催中だ。規格外の壮大なプロジェクトを都心の赤坂・六本木エリアで表現する」、というところまで含めて、「そこまでやるか」という驚きが詰まっている。

「土の旅」淺井裕介
泥や絵の具を使って絵画を描き続ける淺井裕介。この作品にはこれまで各地で採取した土に加え東京ミッドタウン内の土も使用。壁面いっぱいの大きな絵画は、間近で見ると有機的な質感がリアルに迫ってくる。
具体性があるようで抽象的
キャッチフレーズから読み取る作品の世界観の妙
企画展「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」は、21_21 DESIGN SIGHTオープン以来、ギャラリー1とギャラリー2、今年の3月31日にオープンしたばかりのギャラリー3まで、すべてのスペースを使用する初めての展覧会なのである。
展示スペースへの入口に展示作品のキャッチフレーズが並んでいるのだが、これがじつに巧い。具体的な数字を織り込むことで一瞬「壮大さ」を感覚として理解できるような気になるが、実際には数字が大きすぎてよくわからなかったり、なにを意味しているのかよくわからなかったりする。

「Church of the Valley」石上純也
建築家、石上純也の現在進行形のプロジェクト。中国山東省の渓谷に幅1.35m×高さ45mという他に類を見ない形状の教会を建てるという。現地で実際の建物を見てもわからない全体像を模型で見ることができる。

そのスケール感を表すかのように、小さな人間のオブジェも置かれている。
それでも「なんかすごい!」と思わせるしかけとしては秀逸だし、作品を見れば「なるほど」とストンと腑に落ちる絶妙な塩梅なのだ。
「どんな作品なんだろう?」と見てみたい欲求を刺激されたら、ぜひ東京ミッドタウンへ行ってみていただきたい。

「テープ・トウキョウ02」ヌーメン/フォー・ユース
透明な粘着テープを何重にも張り合わせた作品。建築的要素を持ったオブジェで、空間の内部に入ることもできる。

空間の内と外の境界は粘着テープの重なりによって乳白色になっている。光や気配は感じるものの互いの様子は見えない閉鎖空間となっているせいか、巨大な繭の中にいるような不思議な感覚に陥る。
既存の手法や概念にとらわれることなく
大胆で柔軟なアイデアを具現化するクリエイターたち
参加作品8組のうち4組の作品は既存の建築物や屋外でのインスタレーションなどとても美術館の建物内に入るサイズ感ではなく、残りの組の4作品は21_21 DESIGN SIGHTという空間にピタリとはめこんで生み出されたもの。
「壮大さ」のベクトルや表現方法はさまざまで、表現にはこんなにも幅広い可能性あったのか、と驚かされる。

「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ」
スイスの音楽祭「ルツェルン・フェスティバル」総裁のミヒャエル・ヘフリガーが、東日本大震災を機に「東北でコンサートを開催しよう」と呼びかけ、実現したプロジェクト。長さ36mの巨大な風船状の可動式コンサートホールの図面や素材サンプル、組み立て時の映像、コンサートの様子などを展示した。

(左)「クリストが語るプロジェクト 創作過程」クリストとジャンヌ=クロードにとって「話すこと」も作品の一部。
(右)クリストとジャンヌ=クロードが現在取り組んでいる「マスタバ、アラブ首長国連邦のプロジェクト」。2枚組のドローイング(2012)。
本展覧会開催のきっかけとなったのは、クリストとジャンヌ=クロードの「フローティング・ピアーズ」だ。
「湖面を渡る100,000平方メートルの布」のキャッチフレーズのとおり、イタリアのイセオ湖に全長3kmもの巨大な布の浮橋を出現させた超ビッグプロジェクト。90年代初頭に構想をはじめ、2016年にようやく実現したというから、足かけ50年の作品ということになる。
大きさも、実現までに費やされた時間も、想像をはるかに凌駕する、まさに「そこまでやるか」な壮大さだ。

「トウキョウ 2017」ジョルジュ・ルース
人の錯視を応用したサイトスペシフィックな作品を世に送り出しているジョルジュ・ルース。角材は実際の空間のなかではさまざまな向きに並んでいるが、ある一点から見たときだけ真円となって浮かび上がるように見える。

ガラスとコンクリートにはさまれた空間に合わせて、白の角材を組み合わせて展示されている。角度を変えて見ると真円はまったく浮かび上がらない。
展覧会は、「フローティング・ピアーズ」を起点に、既存の手法や概念にとらわれることなく大胆で柔軟なアイデアを力強く具現化。クリエイターたちの「壮大なプロジェクト」は、21_21 DESIGN SIGHTでなければ表現しえなかった世界を体感できる。
8組のクリエイターたちの「壮大なプロジェクト」は、想像力と表現の可能性は無限大であることを教えてくれる。「できるかできないかではなく、やるかやらないかだ」という格言がふっと脳裏に浮かんでくるような、そんな展覧会だった。
(取材・文/久保加緒里、写真・川野結李歌)

「カプセルホテル21」西野 達
新しくオープンしたギャラリー3全体を使って、カプセルホテルをモチーフとしたインスタレーションを展示。

ガラス張りの壁面を効果的に使い、外からも楽しめる非日常のアートホテルを生み出した。

(左)会期中、実際に一晩滞在できる予約制のイベントも開催する。
(右)ホテルとしての機能を満たすため、ギャラリー奥にはキッチンスペースと簡易シャワーも作品として設置。
21_21 DESIGN SIGHT企画展 「『そこまでやるか』 壮大なプロジェクト展」
会期:2017年6月23日(金)~10月1日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
開館時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日
入場料:一般1100円/大学生800円/高校生500円/中学生以下無料
*各種割引についてはウェブサイトを参照
電話:03-3475-2121