Season's Home Deli
食材の意外な組み合わせが楽しい
ポルトガル伝統の郷土料理
Text by Mitsuko KUSUMI
Photographs by Naoko MATSUNAGA
9月のRECIPE :
豚肉とあさりのアレンテージョ風煮込み
季節の変わり目は体調を崩しやすいもの。特に今年は猛暑続きで、
夏の疲れから、食欲をなくしていたりしていませんか?
そんなとき、私自身が食べたくなる優しい味、ポルトガルのお料理を皆さんにご紹介したいと思います。
ポルトガル料理ってどんなもの? と思われる方も多いかもしれませんよね。
味付けは素材の味をいかした素朴な塩味が多く、日本食の中の洋食のカテゴリーに入るような、日本人の舌にも違和感のないお料理ばかり。
素材ではタコやイワシなど、私たちになじみのある魚介類がふんだんに使われており、主食はパンのほかに、炊いたお米やお雑炊のようなリゾットが多く食卓にのぼりますし、豆や野菜もよく使われています。
実際、ポルトガルを旅したとき、市場で売られているものを見ても、レストランへ行っても、その違和感のない印象は変わりませんでした。
メニューひと皿ひと皿の量が異常に多いのだけを除いて(笑)。
また、街の石畳の路地脇では、家庭の主婦たちが炭火でイワシを焼いていて、そこらじゅうで煙がモクモク…!
日本の食卓を思い出させる懐かしい匂いと、そこがヨーロッパの建物の街並みの中であるというギャップ! これはなんとも面白い経験でした。
そしてその食べ方にびっくり。
現地の方はどうしているのかというと、その焼いたイワシにレモンを絞り、オリーブオイルをかけてパンにはさんだり、パンの上にのせてイワシの油を吸わせて食べているのです。
やっぱりこれはおしょうゆと白いごはんに決まってるでしょ~! と思う私はやっぱりニッポンジンなんだなぁと苦笑い。
帰国してからイワシのサンドイッチをやってみましたが、まぁ、なかなかな発見となりました(笑)。
素材、調理法、食べ方、そこに横たわる歴史的背景。実に奥深い!
私が「食」って楽しいなと思う理由はそこにあるのかもしれません。
今月はそんなポルドガル料理を3品の献立としてご紹介させていただきますが、どれもほっとする気持ちの良い味付けに仕上がっています。是非お試しになってみてくださいね。
豚肉とあさりのアレンテージョ風煮込み
材料(約4人分)
A:マリネ液
白ワイン……………………………1カップ(200㎖)
パプリカパウダー…………………大さじ2/3
塩……………………………………小さじ1
黒こしょう…………………………少々
B:
にんにく……………………………一片(半割にする)
ベイリーフ…………………………1枚
豚ももかたまり肉…………………450g(3㎝角に切る)
トマト………………………………小2個(約250g。湯むきし、種をとって粗くみじん切り)
殻つきあさり………………………200g(砂出ししておく)
じゃがいも…………………………大1個(約180g。3㎝角に切る)
玉ねぎ ……………………………中1個(約160g。薄切り)
赤パプリカ…………………………1/3個(薄切り)
にんにく …………………………2片(約12g。みじん切り)
赤唐辛子……………………………1/6本(約1g。小口切りor細かく切る)
生コリアンダー……………………大さじ3(みじん切り)
レモンスライス……………………2枚
塩・こしょう………………………適宜
オリーブオイル……………………少量
作り方
1.ジッパー付きのビニール袋にAを入れてマリネ液を作り、その中にBを入れてよくからめてから、室温で3時間、または冷蔵庫でひと晩マリネする(漬け込む)。
2.1から豚肉、にんにく、ベイリーフを取り除き、マリネ液は取っておく。
3.熱したフライパンに、水気をよく拭いた豚肉を入れ、表面に焼き色が付くまで焼いた後、ボウルに取り出す。
4.じゃがいもは、少量のオリーブオイルで素揚げにする。
5.鍋で玉ねぎを炒め、赤パプリカを加えて火を通してから、にんにく、トマト、赤唐辛子、豚肉、マリネ液、あさりを入れ、フタをして中火で5分煮る。
6.あさりの口が開いたら、ボウルに取り出す。
7.豚肉がやわらかくなるまで、弱火で約30分~40分煮込む。
8.あさりを鍋に戻して塩・こしょうで調味した後、じゃがいもと一緒に盛りつけ、生コリアンダー、レモンを飾る。
あさりは、塩水で底の平たい器に入れて暗い場所に置くとよく砂をはきます。
水が飛ぶので、私はお風呂場で砂出ししています。
料理名にある“アレンテージョ”とはポルトガル南部の地名。豚肉とあさりを使ったこの煮込みは、ポルトガルではメジャーな郷土料理です。
今回は、同じくポルトガルの“コインブラ”という場所で有名な、伝統柄の手描きのお皿に盛り付けてみました。
さて次に、この煮込み料理とも相性抜群のスープと、豆のサラダをご紹介します。ポルトガルの伝統料理3品、その素朴でやさしい味わいをぜひセットでご賞味ください。