注目のデザイン
名匠フリッツ・ヘニングセンの遺作を復刻
曲線美が際立つ「シグネチャーチェア」
20世紀のデンマーク・デザインを牽引したフリッツ・ヘニングセンが最後に手がけたイージーチェア。1954年に発表され、わずか20脚あまりが世に送り出されただけだった「シグネチャーチェア」がついに復刻された。
家具職人としてのプライドとクラフトマンシップから生まれた
シグネチャーチェアのシンプルで優美なフォルム
あらためて言うまでもなく、フリッツ・ヘニングセンは近代のデザイン家具に大きな影響を与えたデザイナーのひとりである。同時に優秀な家具職人でもあった。
一流の家具工房「I.P.ムアック」で修業し、22歳で家具職人の資格を取得すると、ドイツやフランス、イギリスなどヨーロッパの各国で技術に磨きをかけた。
やがて、イギリスの17世紀の家具、フランスの帝政様式、ロココ様式などクラシカルな様式をベースにしながら、モダンにリデザインして作品に仕上げていくスタイルを確立。
コペンハーゲンに工房を開くと、自身がデザインした家具を、自らの手で製品化していく。伝統的な技巧を重視したデザインは、ヘニングセンが職人としての誇りを持っていた証でもあったのだ。
デザイナーとしての評価が高まっていっても、ヘニングセンは職人であり続けた。作品をつくり続けるなかで、デザインから装飾的な要素が削ぎ落とされていった。
そして最後にたどりついたのが、ヘニングセンのデザインのなかでもっともシンプルで優美な曲線を持つシグネチャーチェアである。
インダストリアルクレイの本体とマッチ棒の脚でミニチュア模型をつくり、実寸の試作品で得心するまで何度も微調整を繰り返した。1954年、シグネチャーチェアが完成。
わずか20数脚が製作されたチェアが、腕利きの家具職人の遺作となった。
ヘニングセンが信頼を寄せていた工房のひとつ
カール・ハンセン&サンが復刻シグネチャーチェアを製作
完璧を求めたヘニングセンは、自らの工房で製品を生産することにこだわっていたという。他社にデザインを提供することはごく稀で、存命中に「製造を委ねられる」と信用した工房は2社のみだった。
今回、シグネチャーチェアの復刻を手がけるのは、ヘニングセンが信頼を寄せた工房のひとつ、カール・ハンセン&サン。
ヘニングセンがデザインした「ウィンザーチェア」を70年にわたって生産してきたデンマークのファニチャーメーカーで、100年を超える歴史を持っている。
シグネチャーチェアは、本体も脚部もエレガントで滑らかなカーブで構成されている。座った者の身体をやさしく包み込むような、ソフトで安心感のある座り心地だ。
シグネチャーチェアが生まれた20世紀半ば、直線的で軽やかな「ミッドセンチュリースタイル」が広がるなか、ヘニングセンは優雅さと快適性を重視し続けたのである。
カール・ハンセン&サンのCEO、クヌッド・エリック・ハンセン氏は、シグネチャーチェアの復刻に際して述べた言葉がある。
「先代から続く当社とフリッツ・ヘニングセンとの関係は、いまも受け継がれている。ヘニングセンのご家族に見せていただいたさまざまな資料のなかでシグネチャーチェアに出会い、復刻することになった。シグネチャーチェアは、フリッツ・ヘニングセンのキャリアの集大成であり、彼の生き方そのもの。当社のコレクションとして発売できることを誇りに思う」
ヘニングセンが素材の選択から仕上げまでこだわり抜いた完璧なイージーチェアは、もちろんのこと復刻版でも一切の妥協なく製作される。素材は無垢のオークまたはウォールナットで、仕上げはオイルやラッカーなど複数の技法から選択可能。張地はレザーとファブリックが用意される。
半世紀以上の時を経て再び世に送り出されることになったシグネチャーチェア。時代に左右されない絶対的な美しさと機能性を、ご自宅やオフィスで心ゆくまで味わってはいかが?
カール・ハンセン&サン フラッグシップ・ストア
住所:東京都渋谷区神宮前2-5-10 青山アートワークス
電話:03-5413-5421
営業時間:11:00 – 20:00(平日) 12:00 – 19:00(土日祝日)