FLOWER WARDROBE
グリーンをふんだんに使った
サマーアレンジメントで涼を呼び込む

Photographs by Naoko MATSUNAGA
Text by Riuko HARAGUCHI
懐かしい夏の庭をイメージした
緑の生け垣が清涼感を醸し出す
記録的な猛暑が続く今年の夏。そこで今回は、和のテイストを取り入れたアレンジメントを中心に、花で涼しさを演出するアイデアを提案したいと思います。
最初に紹介するのは、今ではあまり見かけられなくなったトクサを“生け垣”に見立てたミニチュアガーデン風アレンジメント。
トクサは湿地に自生するシダ植物の一種で、その姿は緑の“土筆(つくし)”のよう。その昔、ざらざらした茎の部分を使って木や爪を磨いたことから、砥石になる草、という意味で「砥草」とも書きます。
このトクサの中に細いワイヤーを通したものを用意し、交互に絡めて生け垣を作っています。
グリーンは球形のテマリソウや生け垣に絡みつくように伸びるリキュウソウなど、違う個性のものをミックスして、夏草が茂った感じを表現。花器上部にボリュームを持たせたデザインにすることで、生け垣の空間との対比が強調され、より涼しげな印象になります。
また、植物が自然に育つ雰囲気と夏らしい透け感を出すためには、あまり整えすぎず、適度な空間を持たせることも大切。間にはバーク(木の皮)やモス(こけ)を敷くのがおすすめです。さらに、グリーンの間をぬうように伸びるブルーのデルフィニウムと、かわいらしい黄色のヒメヒマワリがアクセントになり、色でも目を楽しませてくれます。
あえてメインの花を決めずに、植物のナチュラルな動きを生かしたガーデン風アレンジメントは、どこか懐かしいレトロな雰囲気溢れ、涼感たっぷり。
まだまだ蒸し暑い日が続きますが、こんなグリーンたっぷりのアレンジメントで夏を爽やかに乗り切りましょう。
Flower arrangement by Miho MATSUI
Flower Material
トクサ/デルフィニウム・ベラドンナ系/ヒメヒマワリ/リキュウソウ/エノコログサ/テマリソウ/ヤマゴボウ/セダム/モス
グリーン同士が互いに
引き立て合って涼しさを演出
次にご紹介するのは、英国式“キャンドルカップ”のアレンジメント。
透明感のあるガラス製キャンドルスティックの上にカップとオアシスを固定し、その中に花を挿していきます。
庭やベランダで育てた夏のグリーンをリビングにおすそわけ……そんなシーンをイメージしたナチュラルなアレンジメントです。
涼やかさの演出にミックスグリーンは効果的ですが、グリーンといってもご覧のように多種多様。葉の大きさや形、色の濃淡、枝の流れなど、それぞれ違いますから、その個性や自然な美しさを引き出すことをなにより意識しました。
存在感のある葉は比較的中心にまとめて、繊細な茎が特徴的なものは、その緩やかな流れや動きを生かすことで、空間も強調できます。
ちなみにグリーン以外に2種類の花、スプレーバラとスプレーカーネーションも使用。グリーンのスプレーバラは“エクレール”、スキンカラーのスプレーカーネーションは“ミルクティー”というシックなカラーのバラをセレクトすることで、全体の統一感を壊すことなく、優雅さの演出にも成功しています。ハーブの葉もプラスしていますので、香りからも涼を感じとれるはずです。
Flower arrangement by Chizue SUZUKI
Flower Material
オリヅルラン/リキュウソウ/タバリアファン/シロタエギク/アジサイ/スプレーカーネーション(ミルクティー)/スプレーバラ(エクレール)/ヒューケラ/ローズゼラニウム/オレガノ/ミント/トウガラシ