デザインインフォメーション
メイン展示の一つ『虹の教会』。礼拝堂のような空間に、ステンドグラスを通して自然光が取り入れられる。ステンドグラスは、およそ500個ものクリスタルプリズムを微妙な角度をつけながら積み重ねられている。
『虹の教会』を構成するクリスタルプリズムのディテール。
作品制作プロセスや発想を共有することで
吉岡徳仁が提示する「未来への答え」もみえてくる
そして今回のメイン展示の一つが、後半で現れる『虹の教会』である。
天井高のある大きな展示室に、礼拝堂のような空間をしつらえ、最奥部にある縦長のステンドグラスを通して自然光が取り入れられる。このステンドグラスは、およそ500個ものクリスタルプリズムを微妙な角度をつけながら積み重ねたもの。
光は虹色に変化し、空間は不思議な光に包まれる。吉岡氏はアンリ・マティスの晩年の設計であるロザリオ礼拝堂を訪れた際に、色の光で満ち溢れた空間に感動し、「いつか自分も光を全身で感じられる建築をつくりたい」と思い続けていたという。
この展示は、吉岡氏が追求する「光」による作品の、一つの到達点といえるだろう。隣には、プリズムの彫刻『レインボーチェア』『レイ オブ ライト』も展示される。
吉岡氏の考える造形や光はどのようなものなのか。この展覧会では時に作品制作のプロセスや吉岡氏の想いが示されることで、見る側も共有することができる。
展覧会のタイトルである「クリスタライズ」には、「自然のエネルギーを結晶化し作品を生み出す」という意味が込められている。
「自然から生み出された、人間の想像を超えた造形。その作品は、人の心を動かす自然と、そこに潜むエネルギーに感応して、自らを造化します。それは、造形や技法という概念からの解放です」と吉岡氏は表現する。
2011年の東日本大震災を通じ、デザインとは何か、表現で何ができるかを考え続けたという吉岡氏。たどり着いた一つの答えは、自然の中に秘められた力や美しさと向き合い、自然のエネルギーそのものを表現した作品をつくるということだった。
最終パートでは、彼の約25年にわたる創作活動の原点ともいえるハニカム構造の椅子『ハニーポップ』、繊維を窯で焼いてつくった『パーネチェア』を展示。これまでの活動を紹介する映像も公開される。
吉岡氏がこの展覧会で込めたエネルギー、時間や想いをどのように味わっていくか。ゆっくりと溶かすように味わうことで、吉岡氏が提示する「未来への答え」もみえてくるに違いない。
(文・写真/加藤 純)
「光」による作品、プリズムの彫刻『レイ オブ ライト』も展示。
吉岡氏の考える造形や光が伝わってくる『レインボーチェア』。
左:繊維を窯で焼いてつくった『パーネチェア』。
右:約25年にわたる創作活動の原点ともいえるハニカム構造の椅子『ハニーポップ』。