デザインインフォメーション
ふたりの芸術家が織りなす、想像上の対話
「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」
箱根のポーラ美術館では、開館15周年を記念し、20世紀を代表する画家であるピカソとシャガールに焦点を当てた企画展、「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」が開催されています。ピカソとシャガールのふたりに光を当てた展覧会は本展が世界初ということで、貴重な展覧会となっています。
ピカソとシャガールの関係性に焦点を当てた
世界で初めての展覧会
パブロ・ピカソ(1881〜1973)とマルク・シャガール(1887〜1985)は、ともにパリを拠点に独自のスタイルを切り拓いた、20世紀を代表する芸術家です。
絵画の革新に挑み続け、対象を激しくデフォルメする「破壊と創造の画家」であったピカソ。対して、鮮やかな色彩で作品を光で満たし、生涯にわたり自身の人生の物語や故郷の風景を主題に取り組んだ「物語と色彩の画家」として知られるシャガール。
このようにピカソとシャガールは、対照的な画家としてこれまで捉えられてきました。ところが二人の作品を比べてみると、対象を変形させる手法や色彩、また「愛」と「平和」という主題においても、共通する部分が多いといいます。
また、二度にわたる世界大戦を経験しながらも、時代と向き合い、旺盛に制作を続けたという点でも共通する二人は、良きライバル関係でもありました。
ポーラ美術館開館15周年を記念する「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」は、彼らの初期から晩年の作品約80点をたどることで、それぞれの新たな芸術家像を浮かび上がらせるという、これまでにない試みの企画展です。
ピカソとシャガールの二人の関係性に焦点を当てた展覧会は、本展が世界で初めてだそう。そのような意味でも大変興味深く、一見の価値のある展覧会といえそうです。
故郷を離れ、二度にわたる大戦から晩年まで、
二人の作風と心情の推移をたどる
展覧会は5章立てで、二人が故郷を離れパリへと旅立つところから、大戦を経て晩年まで、その作風と心情の推移を、作品を通してわかりやすく見ることができます。異質な作家が同じテーマで作品を描いているという点でも、それぞれを比較対照しながら鑑賞できる展示になっています。
第一次世界大戦や故国の内戦に翻弄されるなど、波乱に満ちた人生の中でピカソとシャガールが生涯を通して重要なテーマとしたものの一つが、「故郷」でした。
ピカソにとって、生まれ故郷のスペインは常に創造の源泉であり続け、シャガールにとって、故郷であるヴィテブスク(現ベラルーシ共和国)は自身の作品における重要なモチーフとなりました。今回の展示作品であるピカソの『海辺の母子像』、シャガールの『私と村』、『ヴィテブスクの冬の夜』には、二人の記憶の中の故郷が色濃く反映されています。
第二次世界大戦の悲劇を経験した二人が、「愛」と「平和」という共通のメッセージを込め制作した『ゲルニカ』(ピカソ)と『平和』(シャガール)の迫力あるタペストリーも見どころの一つ。『ゲルニカ』の展示は、5月11日(木)までの期間限定です。
大戦の悲劇を経験しただけに、晩年の二人の穏やかな精神状態を表した作品はとても印象的に映りました。
晩年の絵画には恋人や家族をモチーフにした作品が多く、ピカソの『女の半身像』やシャガールの『オペラ座の人々』『赤い背景の花』などは、その色彩からもハッピーな様子がみてとれ、二人が生涯にわたり旺盛に作品を描き続けた様子がありありと伝わってきました。
会期中はギャラリートークはもちろん、講演会やトークイベントなど展覧会をより深く楽しむための催しも多く用意されているほか、館内のレストラン「アレイ」で、企画展を記念した特別コースメニュー「太陽の食卓」も味わうことができます。
これからの季節、新緑の箱根散策を兼ねて、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
(取材・文/開 洋美、写真/川野結李歌)
ポーラ美術館開館15周年記念展 ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌
会期:3月18日(土)〜9月24日(日)
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は16:30まで
休館日:会期中無休、ただし展示替のため5月12日(金)は一部閉室。
6月21日(水)は休室(常設展のみ鑑賞可)
入場料:大人1,800円/65歳以上1,600円/大学・高校生1,300円/中学・小学生700円
※各種割引についてはHPを参照
お問い合わせ:0460-84-2111(ポーラ美術館)