デザインインフォメーション
生涯あそび心あふれる演出写真を表現
植田正治写真展「もうひとつの風景」
モダンデザインやアート関連書籍が充実する乃木坂の書店兼ギャラリーBooks and Modern(ブックスアンドモダン)で、植田正治写真展「もうひとつの風景」が開催されています。砂丘を舞台にした代表的な作品に加え、ヨーロッパ旅行時の貴重な作品がオリジナルのゼラチンシルバープリントで展示されています。
海外からの評価も高い「砂丘シリーズ」から
あまり知られていない名作まで20点を展示
鳥取県境港市を拠点に、生涯にわたり郷里を離れることなく、地元の浜辺や鳥取砂丘を舞台に遊び心あふれる写真を撮り続けた作家、植田正治(1913〜2000)。
アマチュア写真家”という自負を抱いて独自の写真世界を提示した植田正治の作品は、1980年前後からフランスをはじめとした海外でも高く評価され、「植田調(Ueda-Cho)」という言葉は世界共通語にもなりました。
とりわけ砂丘を背景にしたユーモラスでシュールな演出写真への評価が高く、「砂丘は巨大なホリゾント」という言葉を自身が残しているとおり、植田正治にとって中国地方の海辺は、最高のスタジオだったといいます。
今回の展覧会は、昨年末に発売された『植田正治作品集』(16,000円/河出書房新社)の出版を記念した写真展で、Books and Modern(ブックスアンドモダン)で開かれる植田正治展としては2度目の開催。
ヨーロッパでの評価を不動のものにした「砂丘シリーズ」はもちろん、あまり知られていないストレートフォトの名作品集『植田正治小旅行写真帖 音のない記憶』(1974年)からの作品、あわせて約20点が展示されています。
展示作品はすべてゼラチンシルバー(銀塩写真)のオリジナルプリントで、どの写真からも柔らかで優しい空気感があふれ出ています。日ごろデジタル画像に慣れ親しんでいる私たちの目には、新鮮に映るかもしれません。
59歳で初のヨーロッパ旅行。
植田正治が切り取った「もうひとつの風景」
今回の出版記念写真展「もうひとつの風景」の見どころは、植田正治のいわゆる代表的な演出写真とはひと味違った作品に焦点が当てられているところ。
1974 年に出版された『植田正治小旅行写真帖 音のない記憶』は、自身の2度にわたるヨーロッパ旅行での写真を中心にまとめた作品集です。1972年、59歳の時に初の海外旅行であるヨーロッパ旅行に出かけた植田正治は、夢中でシャッターを切ったそうです。
パリやロンドンの街角、道行く人々や親子に焦点を当てた写真の数々からは、自身が初めて目にする海外への素直な好奇心が垣間見えるようでした。まさに植田正治が切り取った、砂丘ではない「もうひとつの風景」を知ることができる貴重な展示です。
ギャラリーと併設する書店コーナーには、植田正治に関する関連書籍はもちろんのこと、カレンダーやクリアファイル、トートバッグといった、本作品展のために制作されたオリジナルのグッズも販売しています。
また、4月1日(土)16:00〜17:30はBooks and Modernにて、「植田正治とは何者か?」をテーマに、写真評論家の飯沢耕太郎氏を招いたトークイベント(参加費2,000円/ドリンク付)が開催されます。
写真展の鑑賞と合わせて、こちらもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
(取材・文/開 洋美)
植田正治作品集出版記念写真展「もうひとつの風景」
会期:2017年3月8日(水)〜4月15(土)
会場:Books and Modern(ブックスアンドモダン)
住所:東京都港区赤坂9-5-26 パレ乃木坂201
電話:03-6804-1046
営業時間:12:00〜19:00
定休日:毎週日曜日・月曜日
※トークイベントのご予約は下記メールまで
E-mail : info@booksandmodern.com