世界の一流ブランド研究

2012.04.02

ジョージ・ネルソンがけん引した ミッドセンチュリー・モダン

アメリカ・モダンデザインの立役者ジョージ・ネルソンは、20世紀を代表するデザイナーとして、ミッドセンチュリー・モダンの確立に大きな役割を果たした。一方、チャールズ&レイ・イームズの才能を見出すと共に、ハーマンミラー社のデザイン・ディレクターとしても活躍。ネルソンがデザインした家具は、今なお輝きを失うことなく21世紀のモダン家具シーンをけん引している。

 

 

ハーマンミラーの地位を確固たるものにした

デザイン・ディレクター、ジョージ・ネルソン

 

もしも、ジョージ・ネルソンがいなかったら……。21世紀という時代まで、ミッドセンチュリー・モダンが高く評価され続けることはなかったかもしれない。少々おおげさな表現かもしれないが、ネルソンが世界のデザイン界に与えた影響はそれほど大きいものなのだ。

 

ジョージ・ネルソン(1908-1986)は、建築、グラフィックデザイン、編集、教育、プロダクトデザインなど、さまざまな分野で活躍した20世紀を代表するデザイン識者のひとりである。デザイン性の高いプロダクトを生み出しただけではなく、優れたデザインを見出し、批評し、世に広めていった点にこそ、ネルソンの本髄がある。

 

最大の功績は、ハーマンミラー社のブランディングを成功させたことだろう。

 

1944年、クラシックな装飾家具のメーカーだったハーマンミラー社をモダニズム路線に転換させ、黎明期を支えたデザイナー、ギルバート・ローディが突然亡くなった。ハーマンミラーの創業社長D.J.デプリーは、ローディの「これからは家具の製造をするのではなく、ライフスタイルの提案をしていくのだ」というデザイン哲学を継承できる人材を探すなかで、ネルソンに注目していく。

 

当時のネルソンは『アーキテクチュアル・フォーラム』の共同経営編集者。同誌に掲載したストレージ・ウォールに関する記事が、ローディの目に留まったのである。

 

建築家として、ジャーナリストとして、すでに成功を収めていたネルソンだが、ローディの熱意にほだされ、1946年、ハーマンミラーの最初のデザイン・ディレクターに就任。無名だったチャールズ&レイ・イームズの登用、社屋の設計、ロゴマークの原型のデザイン、サイズやイメージなどの情報を記載した高品質なカタログを製作など、精力的にハーマンミラー社をプロデュースしていく。

 

さらに、ネルソンは、社員に対してブランディングの教育も行った。

 

1. なにをつくるかが重要です。

2. デザインはビジネスに不可欠です。

3. 製品は正直なものでなければなりません。

4. なにをつくりたいか自分で決めなさい。

5. グッドデザインの市場はあります。

 

ハーマンミラーの会社哲学として現在も息づいているこの5つの短い理念こそ、ネルソンが残した最大の功績であるとも言われている。

 

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