世界の一流ブランド研究
ジャン・プルーヴェの名作チェアが
スタンダードSPとなって新登場

ジャン・プルーヴェの構造哲学はそのままに
プラスチックを用いて新たな歴史をつむぐ
「素晴らしい住環境を、低価格で整えたい」
フランスを代表する建築家・デザイナーのジャン・プルーヴェはそんな信念を持ってモノづくりを続けていた。
ナンシー大学都市のコンペの際にデザインされたのが、「スタンダード・チェア」(Standard Chair)。スチールのベースにプライッドの座面と背もたれという、当時としてはもっとも先進的な素材を積極的に取り入れたことで大いに注目を集めたチェアだ。
チェアに求められる力学が過不足なく表現されたデザインに、プルーヴェの構造哲学が見て取れる。合理的で無駄のないフォルムを追求し続けたプルーヴェの美学が息づいていると言い換えてもいい。
シンプルでありながらオリジナリティのあるフォルムのスタンダード・チェアは、1930年代から1950年代にかけてさまざまなバリエーションで展開された。そして、21世紀も10年以上が過ぎたいま、新たなステージを見せてくれる。
20世紀後半、飛躍的に進化を遂げたプラスチック素材を、時代を超えた普遍性を持つスタンダード・チェアのデザインに取り入れたのだ。
“プライウッド+スチール”から“プラスチック+スチール”へ。スタンダード・チェアに、また新たな歴史が刻まれる。
ジャン・プルーヴェの20世紀の名作チェアが、現代のライフスタイルに
適した素材を組み合わせてスタンダードSPとなって誕生。
カラーバリエーションの豊富さも特徴。7色のベースカラーと7色のプラスチックカラーを自由に組み合わせることができて、49通りものバリエーションが楽しめる。
オランダのデザイナー、ヘラ・ヨンゲリウスがカラーディレクションを手がける。彼女の繊細な色彩感覚が、
現代のダイニングの景色を変える。
ジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé)
1901年、パリに生まれる。アール・ヌーヴォー、ナンシー派の巨匠ヴィクトール・プルーヴェを父に持つ。アール・ヌーヴォーの環境の中で鉄工芸の技術を習得し、1923年頃に自分のアトリエを設立。この頃パリでル・コルビュジエ、シャルロット・ペリアンらと知り合う。1930年には彼らと現代芸術家組合(UAM)を設立する。合理的で無駄のない構造フォルムによる家具を多くデザインしたプルーヴェは、ナンシー市長、大学の教授なども努め、建築家としても活躍した。家具作品の多くは、2002年にヴィトラ社より待望の復刻を遂げた。オリジナルのビンテージ家具の中にはオークションで数千万円の値段がつくものもあり、世界のセレブがコレクションしている。
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