世界の一流ブランド研究
卵型フォルムが特徴のエッグチェア。シェルの張り地は、さまざま布や革から選ぶことができる。
シンプルにしてアーティスティック
時代を超えて愛され続けるデザイン
飽きのこないデザインで、壊れずにいつまでも長く使えるものを選ぶ――。それが、家具に対する北欧のベーシックな考え方だ。フリッツ・ハンセンも例外ではなく、新しいデザインを生み出しながら、古くからあるデザインも大切にしている。
シンプルであること、飽きのこないタイムレスなデザインでること、アートとしての価値も持つスカルプチュアルなデザインであること。
これらは、フリッツ・ハンセンが掲げているデザイン・コンセプトである。家具づくりに対する真摯な姿勢は、デンマークという土地柄を大いに反映したものだ。
インテリアを構成する要素をいちどに買い揃えるのではなく、必要なもの、ほしいものを、ひとつひとつ買い求めていく。シンプルでタイムレスなデザインは、そんなデンマーク人の家具の集め方にピッタリなのだ。
古い家具と新しい家具を並べても、違和感を与えることはない。むしろ広がりができて、楽しい空間になっていく。
長く愛される製品にするため、惜しむことなく手間をかける。たとえば、絶妙なバランスでしなり、カラダを支えてくれる成型合板。ベニヤの重ね方、圧着方法、切り方など、内部構造は製造開始当時から変わっていない。
「オーガニックシェイプ」と呼ばれる曲線美もフリッツ・ハンセンの特長のひとつだが、アリンコチェアのくびれた部分やエッグチェアのレザーの仕上げなど、細部にいたるまで職人の技が光る。
一見しただけでは評価しにくいディテール、シンプルならではのこだわり。フリッツ・ハンセンの洗練されたデザインは、クラフツマンシップによって支えられているのである。
卵型のフォルムが特徴的な
アルネ・ヤコブセンの名作
エッグチェア(1958年) EGG
designer:アルネ・ヤコブセン
エッグチェアは、コペンハーゲンのSASロイヤルホテルのロビーおよびレセプションエリアのためにアルネ・ヤコブセンがデザイン。その独特な卵型フォルムにより、公共の場においてもプライベートな空間を作ることを可能にした。もちろん住宅で利用されることも多く、フットスツールと組み合わせるとよりリラックスできる。
日本人デザイナーが手がけた
エレガント&ポップなチェア
リンチェア(1996年) RIN
designer:紺野弘通
日本とスウェーデンの両国でデザインを学んだ紺野弘通が、フリッツ・ハンセンとはじめてのコラボーレートでデザインしたアームチェア。日本とデンマークの伝統的なデザインの融合を表現したリンチェアは、機能的でありながら神秘的なまでの美しさを併せ持つ。自然界の鳥の巣のフォルムにインスパイアされて誕生した。
6色のカラー展開に、パディングの有無、パディングの形状、パディングの張り地、ベースの高さなどの要素が加わって生まれた多彩なバリエーションも魅力。
紺野弘通 デザイナー
1972年生まれ。1999年 スウェーデンのウメオ大学在学中にロス・ラブグローブのデザインスタジオへ移籍 。2002年 ロンドンで独立。2008年 東京にデザインスタジオを開設 。日本とデンマークの伝統が調和した、今までにない個性的な作品を多数発表。