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2013.05.20

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ《女性の横顔と眼の習作》1490-92年頃

ペンと暗褐色のインク、金属尖筆/裏打ちの紙に糊付けされた、やや黒ずんだ紙

© Veneranda Biblioteca Ambrosiana – Milano/De Agostini Picture Library

 

 

 

 

 

天才の思考と観察眼がもたらした

さまざまなアイデアと技術は世界の至宝

 

もうひとつの見所は、『アトランティコ手稿』の展示である。レオナルドのアイデアを書きとめた手稿のなかでもっとも大部で充実したもので、各紙葉の台紙が地図(アトラス)と同じサイズであることからその名がつけられた。

 

「作品」ではない「メモ」に、天才のアイデアがぎっしり詰まっている。小さな紙葉の上に、機械工学、天文学、数学、地理学、解剖学など、さまざまな分野の思考が高度に繰り広げられ、手稿の随所に残された素描にレオナルドの非凡な才能が見て取れる。

 

手稿にアイデアを書き連ね続けたレオナルドだが、自身が具体化したものはほとんどないという。しかし、後世に与えた影響は計り知れない。レオナルドの手稿や絵画作品に刺激を受けた頭脳と才能が、レオナルドの思考や手法を受け継ぎ、新しい技術を生みだしていった。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチがいなければ、芸術も科学技術も医学もまったくちがった歩みをしていただろう。彼の好奇心と思考が特定の分野に留まらず、幅広く近代の科学や芸術の礎となったことはまちがいない。

 

レオナルドの作品や手稿とともに、レオナルド以前の素描やベルナルディーノ・ルイーニやジャンピエトリーなど「レオナルデスキ」と呼ばれるレオナルドの追従者たちの油彩画を展示することで、その影響はよりはっきりと浮き上がってみえた。

 

レオナルドの作品を鑑賞したいという向きには物足りないかもしれないが、天才の功績を知ることができる貴重な展示であると思う。

 

文・久保加緒里

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ《複数の弩を装備した歯車の素描》『アトランティコ手稿』

第1070紙葉表1485-1487年頃

© Veneranda Biblioteca Ambrosiana – Milano/De Agostini Picture Library

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロンバルディア地方のレオナルド派の画家《貴婦人の肖像》

1490年頃 テンペラ、油彩/板

© Veneranda Biblioteca Ambrosiana – Milano/De Agostini Picture Library

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロンバルディア地方のレオナルド派の画家《洗礼者聖ヨハネ》

1520年頃 油彩、テンペラ/板

© Veneranda Biblioteca Ambrosiana – Milano/De Agostini Picture Library

 

 

 

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ展-天才の肖像

会場:東京都美術館 企画展示室

東京都台東区上野公園8-36

会期:~6月30日(日)

開室時間:9:30~17:30(金曜日のみ~20:00/入室は閉室の30分前まで)

休室日:月曜日

観覧料:一般1500円、学生1300円、高校生800円、65歳以上1000円、中学生以下無料

問い合わせ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)

http://www.tbs.co.jp/leonardo2013/

 

 

 

 

 

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