デザインインフォメーション

2012.09.03

展示Aが行われている銀座・奥野ビル306号室は、「同潤会アパートメント」がテーマ。

以前、美容室だった頃の姿を現状維持して、306号室そのものを作品としている。部屋で「銀座・奥野ビル306号室プロジェクト」が行っている。

 

 

 

 

同潤会青山アパートメントだけじゃない!

古い建物の魅力を伝え、活用方法を探るイベントへの転換

 

東京での展示イベントは、9月17日まで開催されている。会場となっているのは、同潤会出身の建築家、川元良一氏が設計したと言われる銀座の奥野ビル、江戸川区の写真館をリノベーションした平井のギャラリーYUKIMATSU、井の頭公園を一望できるビルの一室の3ヵ所。いずれも、古い建物の保存やリノベーションを行っている場所だ。

 

メイン会場となるのは、1932年に建てられた銀座奥野ビル(旧銀座アパートメント)の306号室。本来は住居用のアパートメントであった。かつて営業していた「スダ美容室」と、その後のスダさんの住まいを、できる限り当時のままに維持保存している部屋である。

 

エアコンはおろか網戸さえもない小さな室内に、同潤会青山アパートメントの写真や絵、同潤会にまつわる本などのほか、『同潤会記憶アパートメント』の会場で来場者が小さなカードに過去残していったメッセージも展示している。

 

2002年の最初のイベント時にはまだ建築学科の学生だったいしまるさんは、大学院を卒業し、一級建築士として最新の商業施設の設計などに携わりつつ、展示イベントを継続していた。古い建物への興味が失われることはなく、セルフリノベーションした賃貸住宅の一室で暮らしながら活動を続けている。

 

「最初は、継続してイベントを行うつもりはありませんでした。ところが、最初のイベントに来てくださったみなさんからお預かりしたメッセージを読ませていただいて、“これを伝えていかなければいけない”と思うようになっていったんです」

 

「建物を残す手段には、建物そのものを改築や改修して活用する“リノベーション”があります。普段から建築に興味を持っている人は多くありませんが、『Re1920記憶』を通じて少しでも関心を持ってもらえるようになったらいいな、と思っています」

 

2002年、はじめての展示イベントから参加し続けている浅井久子さんは言う。

「同潤会青山アパートメントの絵を描き続けています。以前ははっきりとしたディテールまで描けたのですが、わたしのなかの記憶もだんだんあいまいになってきて、最近は抽象的なイメージが多くなってきました。同潤会青山アパートメントが消えた、という事実は変わらないけれど、同じ年代に生まれた建物でも現役で活用されている事例もある。古い建物について経済的観点から見てみたいと思い、いまは税理士の資格取得に向けて勉強しています」

 

世の中には、時代を超えて「よさ」を伝える建物がいまもたくさん残されている。そんな建築に触れ、魅力を感じてほしい。ストック活用が当たり前になってきた今、いしまるさんたちの熱心な活動は、さらに強い意味を持ち続けていく。

 

 

 

 

消え去った同潤会アパートメントのかつての写真も作品として展示。

過去の展示では、写真や絵など同潤会青山アパートメントにまつわる作品を展示すると同時に、来場者から「青山アパートメントの好きなところ」を思い思いのメッセージで書き残してもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同潤会青山アパートメントの住居表示版も展示されている。

かつて306号室が美容室だった頃の看板も写真で蘇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同潤会青山アパートメントから見えたツタが覆う窓辺に見立てて展示している。

会場となる1932年に完成した銀座・奥野ビル。当初は銀座アパートメントという集合住宅だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いしまるあきこさんの「ミニアパートメント」や、浅井久子さんの「Memory of the apartment」などの作品が展示されている。

 

 

 

 

 

 

 

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