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2014.12.09
〈リバーサイド・ミュージアム〉 グラスゴー 2004-11 竣工 photo: Hufton + Crow (C) Zaha Hadid Architects

〈リバーサイド・ミュージアム〉 グラスゴー 2004-11 竣工
photo: Hufton + Crow (C) Zaha Hadid Architects

 

“アンビルト”の冠が外れ、名実ともに

“建築界の女王”となったザハの世界

 

続く最大の展示室では、前述の黒い展示台がよりダイナミックに展開する。壁面を伝い、床を這うように連なるひとつながりの物体。稲妻か大蛇のように、大きな展示スペースを縦横無尽に走る。

 

このスペースで注目されるのは、ザハ・ハディドが持つ“動き”の感覚だ。指輪やカトラリー、靴といった小さなモノから都市計画レベルの巨大なプロジェクトまで、さまざまなスケールで一貫して表現されている躍動感、流動性が強調される。

 

さて、時代が彼女に追いついたというべきか。施工技術の進歩やコンピュータによる三次元解析の向上などによって、世界各国でザハの計画したプロジェクトが多数進行し実現している。

 

その様子は、このスペースの大きな壁面にプロジェクタによって映し出されており、先ほどの稲妻のような台は一部がベンチになっていて、そこには座って鑑賞することができる。“アンビルト”の冠が外れ、名実ともに“建築界の女王”となった感のあるザハの世界に、どっぷりとハマってみよう。

 

そして最後のスペースでは、新国立競技場の案が大々的に展示される。一つの建築物の有り様が、一般の関心も惹いて議論を巻き起こすことは、特に日本では珍しい。ある意味で、より多くの人にわかりやすく、引っ掛かりを残す姿であることには間違いない。

 

オリンピック会場に求められる複雑な条件や、施工条件による変更の過程も少し解説されるが、大きく取り上げられているのは周りの環境の中でどのように位置し、見えるのかの画だ。いくつものアングルから丹念に描かれて紹介されているが、皆さんはどう受け取るだろうか。

 

これから建築を見る眼、東京の都市を見る眼を変える可能性もある、必見の展覧会である。

 

(文・加藤 純)

 

〈新国立競技場〉 東京 2012-(C) Zaha Hadid Architects 2020年の東京オリンピックに向けて最優秀賞を獲得した新国立競技場(東京・神宮外苑)。建築デザイン・コンクールを巡っては、さまざまな議論も巻き起こった。

〈新国立競技場〉 東京 2012-(C) Zaha Hadid Architects

2020年の東京オリンピックに向けて最優秀賞を獲得した新国立競技場(東京・神宮外苑)。建築デザイン・コンクールを巡っては、さまざまな議論も巻き起こった。

 

 

会場には〈新国立競技場〉の模型も展示されている。 (C)Zaha Hadid Architects

会場には〈新国立競技場〉の模型も展示されている。

(C)Zaha Hadid Architects

 

〈アリア&アヴィア・ランプ〉Slamp 2013 (C) Zaha Hadid Architects

〈アリア&アヴィア・ランプ〉Slamp

2013 (C) Zaha Hadid Architects

〈リキッド・グレイシャル・テーブル〉David Gill Galleries 2012 photo: Jacopo Spilimbergo (C) Zaha Hadid Architects

〈リキッド・グレイシャル・テーブル〉

David Gill Galleries
2012 photo: Jacopo Spilimbergo
(C) Zaha Hadid Architects

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(C)Zaha Hadid Architects 

ザハ・ハディド

会期:2014年10月18日(日)~ 12月23日(祝・火)

会場:東京オペラシティ アートギャラリー

開館時間:11:00-19:00

(金・土は20:00まで/最終入場は閉館30分前まで)

休館日=月曜日(祝日の場合は翌火曜日)

12月22日(月)は開館

入場料=一般1200円/大・高生1000円/中学生以下無料

住所:東京都新宿区西新宿3-20-2

電話:03-5770-8600(ハローダイヤル)

http://www.operacity.jp/ag

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