デザインインフォメーション
「建築界の女王」、ザハ・ハディド
日本初の大規模個展が開催中!

そのザハ・ハディドの日本初の大規模な個展が、東京オペラシティアートギャラリーで開催されている。これまでに名前を聞いたことがなかった人もよく知っている人も、刺激を大いに受ける展示となっている。12月23日までの開催なので、会期はあとわずか。

〈ロンドン・アクアティクス・センター〉 ロンドン 2005-11 / 2014改修
photo: Hufton + Crow (C) Zaha Hadid Architects
数々のドローイングや模型から見えてくる
斬新なフォルムを創りだすクリエイティビティの源泉
“アンビルトの女王”。幸か不幸か「アンビルト=建たない」という異名を長い間与えられていたザハ・ハディド。
その理由には、本展覧会の最初のスペースから早速触れることができる。壁面に広がるのは、エッジの効いた彫刻か鉱石のような物体が描かれたドローイングの数々。モノトーンを基調とした地色の中にビビッドな色が差し込まれた様子は、見る者をハッとさせ、心に突き刺さる。
〈ザ・ピーク〉の国際コンペティションでは革新的な案とドローイングで1等となるものの、計画の途中で中止に追い込まれ、独立後10年以上にわたって実作に恵まれることはなかった。案を実現しようにも、1980年代当時の施工技術や一般の感性では応じきれなかったのである。
そのようななかで、初めて実現したプロジェクトが日本であったことは、現在に至る日本との関係を指し示すようで興味深い。
それは札幌のレストラン〈ムーンスーン〉の内装。惜しくも現存していないが、今回の展示の冒頭で当時の写真や一部のソファーが配されていることは嬉しい。触れることはできないものの、じっくりと眺めて造形美や配色の妙を味わうことができる。
このソファーに続くように、今回の会場では特別にデザインされた展示台が設えられている。真っ黒で、斜めにカットされたようであったり、時に突き出していたり。展示什器などもまた、彼女の作品であることに留意して、その上に並んでいる模型などを楽しみたい。

〈ヘイダル・アリエフ・センター〉バクー 2007-2012 竣工
photo: Iwan Baan (C) Zaha Hadid Architects

〈ザ・ピーク〉 香港 1982-83 実現せず
(C) Zaha Hadid Architects

ザハ・ハディド photo: Brigitte Lacombe
(C) Zaha Hadid Architectsザハ・ハディド Zaha Hadid
1950年 イラク、バグダット生まれ
1977年 英国建築協会付属建築学校(AAスクール)卒業
Office for Metropolitan Architecture (OMA) 参加
1980年 ザハ・ハディド・アーキテクツ設立
1983年 〈ザ・ピーク〉国際コンペティション1等
1993年 〈ヴィトラ社消防所〉竣工
2004年 プリツカー賞受賞
2012年 大英帝国勲章デイム・コマンダー (DBE) 受章
東京・〈新国立競技場〉国際デザイン・コンクール最優秀賞

会場風景。ザハ・ハディドのスケールの大きい作品を、巨大なスクリーンと共に間近に体験することができる。
(C)Zaha Hadid Architects