デザインインフォメーション
伊東豊雄展
台中メトロポリタンオペラハウスの軌跡
2005-2014
9年間という前代未聞の期間とエネルギーを注ぎ
つくり上げられたダイナミックな造形
2005年末に設計競技を勝ち取った「台中メトロポリタンオペラハウス」(台湾台中市)の伊東案は、見たこともないような画期的なものであった。
外側は四角い箱のように見えるが、内部は有機的で複雑な曲面でうねっている。「本当にできるのだろうか…」という見方を跳ね除けるように今、現地では完成間近の姿を現している。
ただし、かかったのは約9年という長い歳月と膨大な労力。伊東氏と事務所スタッフ、関連するスペシャリストが一丸となって一つの建物を考え、困難に遭いながらも知恵を結集してつくり上げる過程が、この展覧会では丹念に紹介されている。
会場を入り、第1会場(3F)中央に展示されているのは、所狭しと置かれる多くの模型である。
大きさや素材はさまざまで、多角的に検討されている様子が伝わってくる。壁には、模型とも関連しながら、設計競技での提出資料や、構造、音響、空調などの検証が繰り返されたことが時系列で示される。
ここまでで、この建築物の内部に広がる空間は特殊なものであることが実感できるだろう。伊東氏は「流動体のような構造」「sound cave(音の洞窟)」と呼んでいるが、洞窟のような三次元曲面が縦横に連なる、人体の器官を思わせる生命体のような空間なのである。
床・壁・天井の区別も定かでない空間はいかにもダイナミックで奇抜に見えるが、人に優しいように思えるのは、この空間から自然の造形美と心地よさを感じ取るからかもしれない。
建物に納められるシアターは3つ。大きな2つの穴は、大きなシアターのステージ部分に設けられている。内部空間全体の連続した曲面は、オペラハウスで欠かせない音響の質もよくするのだという。そして、チューブ状の空間は縦横無尽に貫通し外へとつながっていく。