デザインインフォメーション
これまでベールに包まれていた「ガラスの家」が
貴重な写真や図面、模型などで多角的に解明される
いよいよ後半は本展覧会のメインテーマである「ガラスの家」の詳細が紹介される。
主な展示は、写真のスライドや図面、模型など。実はこの家、オリジナルの資料がほとんど残されておらず、ベールに包まれていた。目にする図面や写真も、初めて見るものが多い。
平面図を眺めながら階段や廊下に沿って人の動きを追っていくと、有名なサロンの大空間がいかに劇的に目の前に現れるものかが分かってくる。
南北の面はほぼすべてガラスブロックの壁にされたのは、制約のあるアパルトマンの空間に、光を最大限に取り入れるための策であった。黒と朱色に塗り分けられた鉄の柱は、上層階を支えるためのもの。透明感のある室内に現れる特徴について、一つひとつの意味と効果を確認できる。
内部では、機械のイメージや機構が散りばめられていることも紹介される。たとえば、ガラスブロックの面には窓がなく、ハンドルで操作される2枚の金属パネルが換気ガラリとして設けられている。
また、個室に備えられた浴室には、金属製の可動たんすや回転する間仕切りなど独創的な仕掛けがあり、無理なくインテリアに溶けこませてある。「ガラスの家」が今なお新鮮に感じられる理由については、話題に事欠かない。
「ガラスの家」が立体的に把握できるようになったところで、二度の世界大戦と不況の影響を受けた、不遇の晩年も紹介される。それでも、本展覧会を通して印象に残るのは、建築家として新しい表現にかけるピエール・シャローの熱い信念である。
『今日の国際芸術』という雑誌に寄稿された彼の次の熱意は、一生涯続いたであろうことに疑いの余地はない。
「新たなイメージは新境地を開く。……それは旧いイメージを打破する……。それは我々の想像力を誘発する。我々を無限の希望で満たし、我々の心の中に熱い信念をかきたてる。」(『今日の国際芸術』vol.7より。本展覧会に合わせて出版された書籍に収録)
(文・加藤 純)
建築家ピエール・シャローとガラスの家 展
会期:2014年7月26日(土)~ 2014年10月13日(月・祝)
会場:パナソニック 汐留ミュージアム
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
休館日:水曜日
入場料:一般800円/大学生600円/中高生200円/小学生以下無料
*各種割引についてはウェブサイトを参照
住所:東京都港区東新橋1-5-1パナソニック東京汐留ビル4F
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)