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2014.07.07
7

「スポットニュース」の部単写真1位

フィリップ・ロペス(フランス)、AFP通信フィリピン、トロサ(2013年11月18日)

台風30号「ハイエン」に襲われたレイテ島東部のトロサで、宗教的行事の行進に参加する生存者たち。観測史上最大のサイクロンとなったハイエンは、フィリピン中央部を中心に8,000人の死者と行方不明者を出し、400万人以上が家を失った。

 

「いま」の時代を反映する写真

「いま」の時代を切り拓く写真

 

作品に長めのキャプションがついているのも本展覧会の特徴のひとつ。写真そのものにも十分なインパクトがあるが、キャプションを読むことでメッセージがより深く伝わってくる。

 

大賞を受賞したのは、アメリカの写真家、ジョン・スタンマイヤー氏写真だ。満月の下でスマートフォンや携帯電話を天に掲げる男たちが数名写っている。

 

月明かりのなかでなにかを撮影しようとしている様子だろうかと思いながらキャプションを読んでみると、そうではなかった。アフリカ出身の出稼ぎ労働者たちが、ジプチの夜の海岸で、隣国のソマリアからの安価な電波をキャッチしようとしているのだという。

 

衝撃を受けた。一昔前には考えられなかったことが、いまの現実になっている。「現実」は、自分の身の周りで起こっていることだけではない。国の数だけ、民族の数だけ、人の数だけ、「現実」があるのだ。

 

紛争、貧困、家族、暴力、疾病、自然との共存、民族、宗教。歴史のなかで繰り返されてきた一見普遍的な問題にも、必ず時代性があるものだ。その時代性を浮き彫りにし、見た者に考えさせる力こそ、フォトジャーナリズムの真髄なのである。

 

世界の各地で、それぞれの視点で切り取った秀作が約140点集まることで、点が線になり、線が面になり、面が立体になり、「2013年」を多角的に表現する作品群になっている。時代を記録することは報道の使命のひとつであるという意味においても、たいへん意義深い展覧会だと思う。

 

自分たちの生きている「いま」を、ぜひ観に行ってほしい。

 

(文・久保加緒里)

 

8

「スポーツ・アクション」の部単写真2位

アンジェイ・グリギエル(ポーランド)、PAP(ポーランド通信社)、ポーランド、

シュチルク(2013年3月24日)

シュチルクで開催されたスキー回転競技の出場者。

 

9

「スポーツ・フィーチャー」の部組写真1位

スウェーデン、リディンゴ(2013年12月19日)

最後の治療の直前に順調な回復ぶりを見せるナディア。スウェーデンの女子陸上選手ナディア・

カサデイは、7種競技で世界選手権やヨーロッパ選手権に出場してきた。2013年の秋にがんと

診断され、2014年1月に化学療法を終了した。闘病中もトレーニングを続けた彼女は、健康を

取り戻してリオ・デ・ジャネイロの夏のオリンピック出場を目指そうとしている。

 

10

「観察肖像」の部組写真1位

カルラ・コヘルマン(オランダ)オーストリア、メルケンブレヒツ(7月19日)

地方の村メルケンブレヒツに住む姉妹、ハンナとアレナ。

 

11

「自然」の部組写真1位

スティーヴ・ウィンター(米国)米国、ロサンゼルス、(2013年3月2日)

ロサンゼルスのグリフィス公園内を歩くクーガーの姿を、仕掛けカメラがとらえた。

2年前から棲みついているこの公園まで行くには、米国内でも交通量の多いことで

知られる高速道路2本を横切らなければならない。クーガーは西半球ではもっとも

適応能力が高く、チリの南端からカナダのユーコン川まで広範囲に生息する陸上哺乳類だ。

ロサンゼルスやハリウッドヒルズなどの都市部に姿を現すことが増えているが、この秘密

めいたネコ科動物への恐怖と、一般市民の間に十分な知識が欠けていることが結びつき、

毎年数千頭のクーガーが殺されている。ワイオミング州のテトン国立森林保護区の科学者たちは、

首につけたGPSと仕掛けカメラによって、クーガーの基本的な行動をもっとよく知り、秘密の

ベールを暴こうとしている。

 

12

「自然」の部組写真3位

クリスチャン・ツィーグラー(ドイツ)ナショナル・ジオグラフィック誌向け、コンゴ

(2011年1月25日)

コンゴ民主共和国のココロポリ・ボノボ保護地区の近くには生息する野生のボノボの群れの中で、

とくに好奇心の強い5歳のボノボ。人間にもっとも近い動物であるにもかかわらず、コンゴ盆地

周辺部に暮らす野生のボノボと彼らの生態についてはほとんど知られていない。生態系の縮小と

野生動物の肉の取引のために生存が脅かされている。

 

 

世界報道写真展2014

会期:2014年6月7日(土)~ 2014年8月3日(日)

会場:東京都写真美術館 地下1階展示室

開館時間:10:00-18:00(木、金日は20:00まで。7月17日以降の木、金は21:00まで)

入館は閉館30分前まで

休館日:毎週月曜日(7月21日開館、翌22日休館)

観覧料:一般800円/学生600円/中高生・65歳以上400円

*各種割引についてはウェブサイトを参照

住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内

電話:03-3280-0099(東京都写真美術館)

美術館サイト:www.syabi.com

世界報道写真展公式サイト:http://www.asahi.com/event/wpph/

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