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2014.07.07

いま、世界で起こっていることに感動
『世界報道写真展2014』開催中

世界各国で撮影されたドキュメンタリー写真と報道写真のなかから、選りすぐられた約140点を展示する『世界報道写真展』。「おなじ時代、おなじ空の下に」という副題にもあるように、昨年1年間に、地球上のどこかで起きたことを写した作品が並んでいる。1枚の写真の持つインパクトの強さと、驚くようなドラマにあらためて感動できるはずだ。

 

世界の写真家が撮影した約10万枚の写真から

選び抜かれた秀作を約140点展示

 

会場に入り、1組の作品に吸い寄せられた。女性が男性にキッチンの隅に追いやられている。そばには裸のこども。大きな事件ではない。DVの1シーンだ。

 

一方に、マイクを握り、歌う兵士たちの写真がある。ミャンマー軍によって包囲されている町のカチン独立軍の戦闘員だという。

 

2作品を見比べ、ハッとした。個人の日常のなかに事件があり、世界的な事件のなかにもひとびとの日常があるのだと痛感した。

 

展示されている作品のなかには、「事件」が起きている瞬間を捉えたものがある。人物のポートレートのような作品があり、動物を写した作品がある。事件や事故の犠牲者を写したものもある。「動」の写真があり、「静」の写真がある。

 

すべて、2013年の1シーンを切り取った作品だ。国も、撮影スタイルも、テーマも、作風もさまざまだが、どの写真にも、なにかを訴えかける力、鑑賞者を惹きつける力がある。すべて作品に、撮影対象を通して真摯に「時代」を見つめた報道写真家のエネルギーが宿っているように感じられた。

 

「現代社会の問題」の部組写真1位

サラ・ナオミ・ルーコヴィッツ(米国)、タイム誌(2012年11月17日)

けんかが長引いて激しさを増すと、シェーンはマギーに台所で殴られるか、

地下にいって2人だけで話すかのどちらかを選ぶように言った。オハイオ州ランカスターで。

 

3

「日常生活」の部単写真1位

ユリウス・シュランク(ドイツ)、デ・フォルクスクラント紙、ミャンマー(2013年3月15日)
カチン独立軍の戦闘員たちが、前日死亡した指揮官の葬儀で、酒を飲みながらその功績を称えている。

町はミャンマー軍によって包囲されている。

 

4

「スポットニュース」の部組写真1位

ゴラン・トマセヴィチ(セルビア)ロイター通信、シリア、ダマスカス(2013年1月30日)

ダマスカス近郊アインタルマで、シリア政府軍の戦車砲攻撃を受け、飛び散る破片から身を

守る反政府派の戦闘員たち。1月30日、ダマスカスで政府軍への攻撃を計画していた反体制派

グループは、スナイパーの狙撃の標的になった。胸を撃たれ、その傷がもとでのちに死亡する

仲間を退避させたあと、彼らは再び戻って検問所をロケット砲で攻撃した。政府軍はこれに戦車

からの砲撃で応戦。反体制派はその日の攻撃を終えて撤退すると、同志の死を悼んだ。

 

「演出肖像」の部単写真1位

ブレント・スタートン(南アフリカ)、インド、西ベンガル州、

ゲッティイメージズによるルポルタージュ(2013年9月25日)

西ベンガル州にある視覚障害者のためのヴィヴェカナンダ・ミッションスクールの寄宿舎で、

写真撮影に応じる先天性色素欠乏症の少年たち。ここはインドでは数少ない盲学校のひとつだ。

 

一般ニュースの部組写真2位

ウィリアム・ダニエルズ(フランス)、中央アフリカ共和国、

パノス・ピクチャーズからタイム誌(2013年11月17日)

首都バンギの通りに集まり、ミシェル・ジョトディア暫定大統領の辞任を求めるデモ参加者たち。

反政府武装勢力セレカのメンバーによるモデステ・マルティノー・ブリ判事暗殺が抗議運動の

引き金になった。フランスからの独立から55年間、中央アフリカ共和国ではたびたびクーデターと

政治動乱が繰り返されてきた。現在の危機もやはりクーデターがきっかけとなったものだが、おもに

イスラム教徒から成る武装組織と、多数派であるキリスト教徒系の民兵組織「アンチ・バラカ」の

対立という新たな構図が生まれ、イスラム武装組織側は武装解除を拒否している。国連はこの内紛が

大量殺戮に発展する危険があると警告、フランスは治安維持部隊1,600名を派遣し、民間人の保護と

それぞれの民兵組織に対し武装解除の説得にあたっている。コンゴ民主共和国、南スーダン、チャド

など、中央アフリカのやはり政治的に不安定な地域と国境を接する国での内戦は、アフリカ大陸全体、

さらにはより広範な地域に警鐘を鳴らしている。

 

 

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