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2014.06.09

「光」が創り出す幻想絵画のような写真展
『佐藤時啓 光-呼吸 そこにいる、そこにいない』

シリーズ「光-呼吸」より #347 Hattachi 1998年 東京都写真美術館蔵
「光」をモチーフにした幻想絵画のような写真展が、恵比寿の東京都写真美術館で開催されている。1980年代後半から国内外で活躍を続け、現代写真界をけん引する写真家・佐藤時啓の初の大規模個展である。光・時間・空間・身体をテーマにして、あくまで写真装置によって光が像を結ぶという現象を探求する試みは、写真表現の無限の可能性を感じることができる。

 

風景のなかに入り込む

存在感ある光の軌跡

 

写真は「瞬間」を切り取るものだと思っていたが、佐藤時啓(ときひろ)の作品を目のあたりにしてそうではないことに気がついた。カメラは光を写し取る装置であり、写真はその光を再び可視化するためのツールなのである。

 

小さな円状の光が画面のあちこちに散りばめられている。線状の細い光が画面の一部を埋め尽くしている。

 

大きく引き伸ばされた作品の前に立った瞬間、現実世界と幻想世界がひとつになったような世界にグッと引き込まれ、眺めているうちにだんだんと不思議な気分になってきた。

 

「どうやって撮影したんだろう?」

 

そんな疑問が、ふつふつと沸きあがってくる。CGの技術を駆使して、加工をしているのだろうか。それともなにか壮大な仕掛けがあるのだろうか。

 

キャプションを読んでみると、どうやらタネも仕掛けもないらしい。カメラそのものがカラクリと言えなくもないが、カメラの仕組みと光の特性を最大限に活かしている、ただそれだけだ。

 

いずれの作品も、長時間露光で撮影されたものだ。点状の光は、日中、カメラに向けて手鏡で反射した陽光。線状の光は、夜間にペンライトを動かした軌跡。いずれも、撮影者である佐藤自身がフレームの中を移動しながら光源となったという。

 

しかし、不思議なことに作品には佐藤の姿が写っていない。露光時間が長くなると、動いたモノはブレて写る。何分も、ときには何十分も露光している状態では、まったく動かない静物と照度の極めて高い光そのものだけが記録され、移ろっていく人の形跡はブレて風景に溶け込んでしまうのだ。

 

ずっとそこにあるモノと瞬間のエネルギー、そのあいだにある時間と気配が、佐藤の作品に写っている。

 

シリーズ<光-呼吸>より ≪Shirakami #7 ≫ 2008年   インクジェット・プリント  作家蔵

シリーズ<光-呼吸>より ≪Shirakami #7 ≫ 2008年 インクジェット・プリント  作家蔵

 

シリーズ<光-呼吸>より ≪#284 Dojunkai Apartment≫

1996年インクジェット・プリント  作家蔵

 

シリーズ<Polaroid Works>より ≪ Via Appia Antica2(Roma) ≫ 1991年 拡散転写方式印画 作家蔵

シリーズ<Polaroid Works>より

≪ Via Appia Antica2(Roma) ≫ 1991年 拡散転写方式印画 作家蔵


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