デザインインフォメーション

2014.02.03

展示会場は膨大な模型と図面を中心に、これまでの主なプロジェクトや現在進行中のプロジェクトも濃密に見せている。

© Nacása & Partners Inc

 

空間の価値を時代ごとに探求してきた内藤廣氏

過去と現在、これから進化する姿まで一挙に公開

 

4階の第2会場では、所員の執務空間や模型部屋のような空間を再現。

 

木でつくられた初期プロジェクトの模型に加えて、コンペティション出品作などの未完の作品も展示。現在進行中のプロジェクトではスケッチや検討用の模型、さらにはコンペ提出時の資料まで公開している。

 

30余年にわたる設計活動の詳細をさらに知りたい方は、奥に置かれた2台のパソコンで物件の写真やデータを観覧できる。そこには分厚い実施設計図面も自由に閲覧できるように置かれ、同業者にとっては実に勉強になるはずだ。

 

今回の展覧会に合わせて、『内藤廣の建築 2005-2013–素形から遠景へ2』(TOTO出版)も刊行された。建築写真が並ぶのではなく、本展覧会のようにスケッチや言葉を絡めながら内藤氏の頭の中を見せるようなつくりとなっている。

 

「島根県芸術文化センター」(2005年)から「九州大学椎木講堂」(2014年)に至る23作品を掲載しているほか、東日本大震災が自身に与えた影響、将来への希望についても言及した内容である。

 

2011年3月11日、内藤氏は東京大学教授退官記念の「最終講義」を行う直前に大地震に遭った。講義は中止し、復興計画などに関わるようになった。

 

「空間の価値」を時代ごとに常に探求してきた内藤氏は「建築はそこに生きる人の生命が宿る場所であり、人々が過ごした時間や空間の記憶が張り付くことによって、建築自体が命を得ている」という。

 

そして「個人の暮らしの夢である“素形”から、共同体の夢である風景、すなわち“素景”こそが、3.11を経た現代において実現されるべきものである」と語る。進化系となるその姿はどのようなものなのか。片鱗をこの展覧会で受け取っていただきたい。

 

(文・加藤 純)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木でつくられた初期プロジェクトの模型や、コンペティション出品作などの未完の作品も展示。

© Nacása & Partners Inc

 

 

[左]九州大学椎木講堂(2014年完成予定)、[右]安曇野市庁舎(2015年完成予定)。

 

 

 

内藤 廣(ないとう・ひろし)

1950年、生まれ。1976年、早稲田大学大学院修士課程修了。1981年、内藤廣建築設計事務所を設立。2001〜2011年、東京大学大学院で教授・副学長を歴任。2011年より同大学名誉教授・総長室顧問。

主な建築作品に、「海の博物館」(三重県、1992 年)をはじめとして、「島根県芸術文化センター」(島根県、2005年)、「日向市駅」(宮崎県、2008年)、「高知駅」(高知県、2009年)、「虎屋京都店」(京都府、2009年)、「旭川駅」(北海道、2011年)など多数。

著作は、『内藤 廣と若者たち 人生をめぐる一八の対話』(東京大学景観研究室編、鹿島出版会)、『内藤 廣の建築 1992-2004 素形から素景へ1』(TOTO出版)、『形態デザイン講義』(王国社)など多数。

  

内藤廣展 アタマの現場

会期:2014年1月18日(土)~3月22日(土)

会場:TOTOギャラリー・間

開館時間:11:00~18:00(金曜日は19:00まで)

休館日:日曜日・月曜日・祝日

入場料:無料

住所:東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F

電話:03-3402-1010(代表)

http://www.toto.co.jp/gallerma/

 

 

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