デザインインフォメーション
空間の価値を探究し続けてきた
建築家・内藤廣の思考を探る展覧会
日本を代表する建築家である内藤廣氏の建築展「内藤廣展 アタマの現場」が、東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間で開かれている。現在各地で進んでいる最新プロジェクトやこれまでの仕事とプロセス、思考が巡る様子を紹介。内藤氏の頭の中を覗き見るような展覧会となっている。
数多くの美しい建物の設計を支えた
精緻な模型と圧倒的な量の図面を生み出す思考の現場
内藤氏は初期の代表作「海の博物館」(1992年)をはじめとして、自身が「素形」という言葉で表現するように、質実剛健で美しい建物を数多く設計してきたことで知られている。
今回の展示は膨大な模型と図面を中心に、これまでの主なプロジェクトに加えて、現在進行中のプロジェクトを濃密に見せている。
3階の第1会場でまず現れるのは、現在進行中で来年竣工予定の「静岡県草薙総合運動場体育館」の模型。発想の源となった小さな金属紙の模型と、精緻な架構が表現された大きな模型の対比が面白い。
そばには、実際に使われる太い柱の一部が置かれている。建築物を設計することが想像もつかない方でも、このエリアをじっくりと見るだけで建築のデザインではさまざまなスケールを行き来することや、高度な技術を用いながら考えることが実感できるだろう。
この第1会場には、奥の壁面に蔵書の3分の1を持ってきたという書棚、内藤氏が普段使っている机のほか、前衛生け花作家、故・中川幸夫さんの書や古代ローマの都市図 “カンプスマルティウス” も運ばれて設置されている。建築物を生み出す思想や環境も含めた、内藤廣建築設計事務所の一部が再現されているのだ。
そして、一つの大きな見どころは、中庭の壁に貼りつけられた言葉の数々である。
なにか模様のようにも見えるラインは、内藤氏がこれまでに紡ぎ出してきたフレーズ。一つひとつに対峙すると、言葉に表すことと建築をつくることには密接な関わりがあることが分かるだろう。そして、見る一人ひとりも、勇気づけられる言葉を発見するに違いない。
会場には内藤廣建築設計事務所の一部も再現。普段使っている机や故・中川幸夫さんの書なども運ばれ、建築物を生み出す思想や環境に接することができる。
© Nacása & Partners Inc
展覧会の大きな見どころの一つである、中庭の壁に貼りつけられた言葉の数々。
© Nacása & Partners Inc
[左]静岡県草薙総合運動場体育館(2015年完成予定)、[右]A project(プロジェクト)。