行ってみたいデザイン空間
眺望のよい貸切露天風呂には、マイナスイオンが豊富な酸化還元水を使用。湯量に限りがあるため、男女別の露天風呂と客室「翠景」の客室露天風呂のみ温泉となっている。
喧騒を離れた箱根の名湯で、ゆったりと流れる時間のなかで
質の高いアートを独り占めする贅沢
14室ある客室と足湯バーのあるロビー、廊下などのパブリックスペースに計30点の作品がかけられている。いずれも、巧みな筆さばきで描かれた美人画だ。
上品でしっとりと艶っぽい美女の姿は、見惚れてしまうほどの存在感がありながら、けっして主張しすぎることがない。カッシーナなどのモダンファニチャーと見事に融和し、空間を彩っている。ロビーや客室のつくりは7年前と大きく変わっていなかったが、志村立美の作品によってインテリアの統一感が増していた。
志村立美は、山川秀峰の下で日本画を学んだのち昭和初期に挿絵画家として人気を集めた作家だという。晩年になって原点である日本画に回帰し、精力的に作品を描き続けるなかで数多くの美人画を残したのだ。
強羅天翠は、志村立美の作品を常設展示している国内で唯一の施設だそうだ。日本画らしい繊細なタッチで描かれた穏やかな表情の美人画は、静かな息遣いさえ聞こえてきそうなほど活き活きとしている。美術館やギャラリーとちがって、客室内でくつろぎながら何時間でも眺めていられるというのも贅沢ではないか。
高いデザイン意識を持った宿はたくさんあるが、ひとりの芸術家の作品を多数揃え、常設展示している一軒となるとそう多くはない。名画のコレクションをじっくり味わう旅も、たまにはいいなと思う。
ロビーの足湯カフェにも志村立美の作品が飾られている。
志村立美の日本画はカッシーナをはじめとするモダンファニチャーとの相性もよい。
客室をはじめロビーや廊下などに30点の作品が飾られている。
展望風呂付洋室には、コルビジュエがデザインしたカッシーナの名作チェア、LC1が。
茶菓を収めた小さな引き出しや陶製の灰皿など、客室の小物もデザイン性に優れている。