行ってみたいデザイン空間
歴史遺構と一体化した新商業施設
マーチエキュート神田万世橋
「旧万世橋駅」という交通の要衝で再生した
新旧融合のモダンな商業施設
9月14日、東京都千代田区神田須田町の万世橋高架橋に、旧万世橋駅の遺構を取り込んだ商業施設「マーチエキュート(mAAch ecute)神田万世橋」がオープンした。
ここは中央線の神田駅と御茶ノ水駅間にあり、古くは「万世橋駅」があったところ。100年以上前の1912(明治45)年に完成した万世橋駅は、東京市電(路面電車)の乗り換えターミナルとして賑わっていた。
赤レンガづくりの立派な駅舎は関東大震災で消失してしまったものの、万世橋駅高架橋は100年以上にわたって存続。数年前まではここに鉄道博物館(後の交通博物館)があったことから、訪れたことのある方も多いはず。
今回の大きなテーマは、万世橋駅高架橋が受け継ぐ歴史や記憶を活かしながら、新しい要素を取り入れて再生することだ。
開発主体であるJR東日本ステーションリテイリング代表取締役社長の三井剛氏は「古いものと新しいものとが融合する唯一無二の存在としたかった」と語る。
赤レンガ造りの美しく力強いアーチが連続する景観。今回、凹凸のあるレンガの表面は質感を復原するために洗浄され、アーチの形状を保ちながら耐震補強工事が施されたという。
レンガのアーチが並ぶ南側の「サウスコリドー」エリアには、世界各地のワイナリーに足を運び取り寄せたワインを販売する「VINOSITY domi」、農園単位で生豆を選別するコーヒー専門店「OBSCURA COFFEE ROASTERS」など、嗜好性の高い個性的なショップが並ぶ。
神田川に面したオープンデッキでつながる北側の「ノースコリドー」エリアでは、セレクトショップとカフェを併設した「haluta」などが展開。内部は高架橋の小さなアーチが、施設に沿ってずっと連続する回廊のような空間で、つい歩きまわってしまう。
交通博物館時代の名残をとどめる旧万世橋駅を再生したマーチエキュート神田万世橋。
個性的な11のショップを展開する。
(左)旧万世橋駅や神田界隈の歴史を知ることができるギャラリー&ショップの「LIBRARY」。
(右)古い駅舎の構造を活かしたアーチ型の室内空間が印象的。
(左)コーヒー専門店「OBSCURA COFFEE ROASTERS」。
(右)セレクトショップとカフェを併設した「haluta」。
建物の横を流れる神田川。間近に水を感じられるのも、
マーチエキュート神田万世橋の大きな魅力だ。