世界の一流ブランド研究
リビング・ランドスケープ(LIVING LANDSCAPE)。90度回転させることができるソファユニット。
回転するソファ、高さ調節可能なスツールなど、
ドイツらしいメカニカルな機能も……
ウォルター・ノルのもうひとつの特色は、メカニカルなつくりにも強いところだ。
たとえば、ダイニングチェア「アンドー(Andoo)」の座面。硬さのちがうウレタンを組み合わせるだけでなく、マイクロポケットコイルスプリングを合わせることで適度な反撥を生み、長時間座っても疲れない、快適な座り心地を生み出している。
とくに傑出しているのは、オーストリアの3人組デザイン集団「EOOS(エオス)」がデザインしたリビング・ランドスケープ(LIVING LANDSCAPE)だ。簡単な操作で90度回転させることができるソファである。
ソファが回転するメリットはどこにあるのか? ソファは座る向きが固定される、というのが常識だ。窓を背にして室内に向けて配置すれば、どんなにすばらしい景色が広がっていても窓の外を眺めるために機能させることは難しい。
ところが、90度回転すれば、最初の配置で肘掛だったところが背面になり、背面だったところが肘掛になり、反対向きに設置したのと同じ状態になる。簡単にソファからのビューを変えることができる、画期的なソファなのだ。
リビング・ランドスケープは、ユニットの組み合わせでさまざまな形態に組めるうえ、内側で接しているほかのユニットと干渉しないようオフセットしながら稼動する。回転は手動だが、女性の力でもスムースに動かすことができる。こうした技術力の高さ、精度の高さも、じつにドイツらしいではないか。
ウォルター・ノルのファニチャーは、全体的にシンプルながら存在感が強い。素材のよさがあっての、完成度の高いミニマルなデザイン。
それゆえ、世界的な建築家のノーマン・フォスターが手がけたフォスター(FOSTER)シリーズをはじめ、北欧クラシックの名作シリーズ、FKの復刻版など、公共性の高い空間にも多くのプロダクツが採用されている。
ドイツ国内のマイバッハやメルセデス・ベンツ、BMWのラウンジ、1975年に完成したベルリン国際空港のVIPラウンジ、ドイツ国内外のオフィス……。日本でも、サントリー美術館や根津美術館など、空間デザインに定評のある環境でウォルター・ノルの名作が採用されている。
時代を超えて評価されるミニマルなデザイン。経年変化を「愉しみ」にできる上質な素材。しっかりとしたつくり。
ウォルター・ノルは、本物志向の人々に愛されるプレミアムな家具をつくり続けているドイツを代表するブランドなのである。
リビング・ランドスケープ(LIVING LANDSCAPE)
手動でかんたんに90度回転させることが可能な画期的なソファユニット。ソファを回転させることで、シーンに合わせて2方向の風景を楽しめるようになる。オフセットしながら回転するため並べているほかのユニットとぶつかることもなく、ウォルター・ノルのメカニカルな技術力の高さを体感できる。