デザインインフォメーション
特別企画・東北のデザイン
地元住民とデザイナーのコラボレーションで生まれる
「石巻工房」のプロダクト
震災の被害が大きかった宮城県石巻市から、いま新しいプロダクトデザインが生まれている。市民工房である「石巻工房」でつくられるプロダクト製品や元気な活動状況など、東北から発信するデザインの力を探る。
Photo : Fuminari Yoshitsugu
被災した商店街の復興支援から生まれた
「地域のモノづくりのための場」とプロダクト製品
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市の中央商店街にいち早く設けられた市民工房から、デザイン性の高い木工品や手芸品が生み出され、ネットショップやリアルショップでの人気が続いている。
この石巻市で「石巻工房」をつくろうと呼びかけたのは、建築家の芦沢啓治さん。震災以前にインテリアの設計をした割烹料理店の店主から声がかかり、復旧の手伝いをするなかで「地元の人々が自力で修繕や家具製作などをするための支援ができないか」と思いつく。
インパクトドライバーなどの工具や材料さえあれば、自力で街と経済を再生する支援ができるはず。また、手芸活動もできるような工房に人々が集まれば、地元コミュニティも活性化していく。芦沢さんの呼びかけに応じて建築・インテリアのデザイナーや施工会社などが集まり、「地域のモノづくりのための場」が開設された。
作業できる場所を整え、道具や材料を揃えながら始めたのは、東北有数の夏祭り「川開き」に合わせた一連の活動だった。浸水して破損したテナントを修理改装した「復興バー」は、現在も人があふれるほどの人気店だ。
また、地元の石巻工業高校に協働を呼びかけ、野外映画上映会で使われる40数台のベンチなどを建築部の生徒たちとつくった。これらのベンチは今でも街中のいたる所に置かれている。
アメリカの家具会社ハーマンミラーも石巻工房の活動に賛同。国内外のボランティアチームは昨秋、石巻に2週間滞在。石巻工房のメンバーがデザインした仮設住宅向けのベンチやスツール、縁台や棚などを製作したり、家具製作のワークショップなどを仮設住宅の入居者とともに行ったりした。
このときに生まれた家具を発展させて、現在は石巻工房ブランドの商品として販売している。