デザインインフォメーション
東北の手仕事から生まれる「飾らない美しさ」が
東京・六本木から発信
現代の日本のデザイン界を担う佐藤 卓氏と深澤直人氏が
独自の視点で東北の「食と住」を紐解く
東京ミッドタウンの一角にある21_21 DESIGN SIGHTで、東北の手仕事に光を当てた展覧会『テマヒマ展〈東北の食と住〉』が開催されている。
昨年3月11日の東日本大震災を受けて、東北で育まれてきた文化に焦点を当てた「東北の底力、心と光。『衣』、三宅一生。」が7月に行われたが、今回は「食と住」に目を向けた。物資を送ったり人員を派遣したりする物質的な支援ではなく、東北で生まれた文化やデザインのすばらしさを伝えることで文化的に支援していこう、という展覧会である。
企画展の準備は、いま話題のグラフィックデザイナーの佐藤卓さんやプロダクトデザイナーの深澤直人さんが中心となって、昨秋から今春まで続けられた。
衣服デザイナーの三宅一生氏とともに21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務めるふたりをはじめ、フードディレクターの奥村文絵さん、ジャーナリストの川上典李子さん、写真家の西部裕介さん、映像作家のトム・ヴィンセントさんと山中有さんが、東北6県に何度も足を運び、東北に根付いた文化をひとつひとつ掘り起こしていった。
プロジェクトがキックオフしても、東北の文化についてはほとんど知らない……そういうところからスタートした。行く先々で出合ったのは、手間と時間をかけてつくられる保存食や工芸品。
長く厳しい冬を乗り越えるために生まれた食品も、雪に閉ざされた家のなかで生み出される手工芸品も、販売するためにつくられてきたものではない。手間をかけ、時間をかける。長年にわたって繰り返されるなかで育ってきた食文化と手工芸が、どの地に行ってもあった。
冬が長い東北は手仕事によるモノづくりが盛んだ。
(『テマヒマ展〈東北の食と住〉』のための映像より。「りんご剪定鋏」(青森県弘前市)
© Tom Vincent/Yamanaka Yu
いぶりがっこ(秋田県横手市)。大根を漬ける前に燻(いぶ)す。
駄菓子(宮城県仙台市)。温かい飴に空気を含ませる。