デザインインフォメーション
再現された原寸の小屋と茶室から見える景色や
多彩なイベントにも注目したい
今回の展覧会のクライマックスといえるのは、2階から3階への吹抜けにピッタリとはまるように設置された木造の小屋である。
これは軽井沢に建つ磯崎氏自身の書斎で、〈鳥小屋(トリー・ハウス)〉と呼ばれるもの。地面から高く持ち上げられたこの小屋に、夏にはこもって執筆活動に励むという。著作の多い磯崎氏の「建築外的思考」を象徴するものとして、本展覧会に登場した。
会期中は、時間が限定されているが実際に登ることができる(時間は会場に要確認)。丸太を削ったような、踏み代の小さな階段を登って行くと、中に広がるのは四畳半程度の大きさの部屋。
一角に窓があり、そこから見える外の風景も映像で再現されている。ここで何を考え、何を書き記していったのか。3階の奥には主な著作が並べられて閲覧できるコーナーもあるので、じっくりと腰をすえて読書にふけるのもよいだろう。
そのほか2階には、1978年に磯崎氏が企画構成を担当した展覧会『間(ま)展 日本の時空間』で設置された茶室も再現。
日本の古典的な茶室をモンドリアンのパターンに置き換えた表現は、今なお新鮮に映る。ここでは毎週水曜日18時より「モンドリアンの茶会」が開催されている(予約制、参加費1,500円)。
会期中には、「とっておきのギャラリートーク」も多彩なゲストを招いて開催(予約不要)。バイオリニスト庄司紗矢香と笙奏者宮田まゆみによるコンサート、建築史家/建築家の藤森照信氏との対談などのイベントも開催(いずれも予約制)。より多角的に、磯崎氏の「建築外的思考」に触れることができる。
この展覧会の開催を通じて、あるいは磯崎新氏自身も新たな発見をして刺激を受けていることだろう。80歳を越えてますます活発に回る脳とクリエイティブな思考と、そこから生み出される作品に、これからも期待を抱かざるをえない。
(文・加藤 純、写真・川野結李歌)
磯崎新 12×5=60
会期:2014年8月 31日[日]~ 2015年1月12日[祝・月]
会場:ワタリウム美術館
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話:03-3402-3001
休館日:月曜日, 12/31~ 1/3 [11/ 3,24,12/1,8,15,22,29,1/12は開館]
開館時間:11時より19時まで[毎週水曜日は21時まで延長]
入館料:大人1,000円 / 学生[25歳以下] 800円
ペア券:大人2人 1,600円 / 学生2人 1,200円
会期中何度でも入場できるパスポート制チケット