デザインインフォメーション

2014.10.14

さまざまな思考と建築がクロスオーバー
「磯崎新 12×5=60」が開催中!

建築、著作、アート、写真、どこかで触れたことがあるであろう、建築家・磯崎新氏の作品。さまざまなジャンルの思考を超えてクロスオーバーする、彼の「建築外的思考」に焦点をあてた展覧会が、東京・神宮前のワタリウム美術館で開催されている。

 

〈鳥小屋(トリー・ハウス)〉と呼ばれている軽井沢の書斉(1982)。この書斉を展覧会場に現寸で再現。

〈鳥小屋(トリー・ハウス)〉と呼ばれている軽井沢の書斉(1982)。この書斉を展覧会場に現寸で再現。

四畳半程度の〈鳥小屋(トリー・ハウス)〉の内部。磯崎氏のお気に入りの空間。

四畳半程度の〈鳥小屋(トリー・ハウス)〉の内部。

磯崎氏のお気に入りの空間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時代とジャンルをクロスオーバーする磯崎新氏

建築以外の活動をあますところなく紹介

 

旧大分県立大分図書館、群馬県立近代美術館、北九州市立美術館、つくばセンタービル、東京都庁舎コンペ案、ロサンゼルス現代美術館などの公共建築。2000年代に入ってからはヨーロッパや中国、中東、中央アジアでの大規模プロジェクトの数々を設計した建築家・磯崎新氏。

 

現代建築をリードしてきた磯崎新氏。芸術家や写真家、音楽家など、建築という枠組みにとらわれずに、さまざまな分野と文化交流を深めながら作品を生み出し、ポストモダンをけん引してきた建築家として知られている。

 

今回の展覧会に合わせて記された磯崎氏の言葉が印象的である。

 

「私はたまたま建築家と世間では呼ばれているけれど、本人は〈建築外〉だけを考えている。他の領域の人々のなかには同じくみずからの専門を超えて思考している人がいる」

 

彼の「建築外」の思索と活動内容に焦点を合わせ、捉え直そうというのが本展の主旨である。もし若い世代で彼の名さえ知らなくても、交流のあった人名や長いキャリアのなかで生み出された作品のいずれかを、きっと目にしたことがあるに違いない。そして、一つ一つの思考の深さに、圧倒されることだろう。

 

展覧会のタイトル「12×5=60」に使われている、何かを暗示しているような「12」というキーワード。会場の展示内容を横断するように、12でくくられる5つのテーマの展示がされている。

 

2・3階では「12の建築外的思考」「12のコラボレーション」が主に展開。磯崎氏が曲線定規として使っていたマリリン・モンローのプロポーションのトレース画や、過去に協働した岡本太郎、イサム・ノグチ、高松次郎、原田大三郎らとの作品などが公開される。

 

磯崎氏のことをよく知る人でも、貴重な映像作品やドキュメント映像などには目を奪われるだろう。

 

4階では「12の栖(すみか)」「12の旅(東洋篇 オリエント)」「12の旅(西洋篇 オクシデント)」という3つのテーマが主に展示される。

 

「いつの頃かカメラを持ち歩くのをやめた」という磯崎氏のスケッチの数々が並べられるほか、それより以前に磯崎氏自らが撮ったという中国での写真スライドは興味深いものだ。

 

12のコラボレーション アニッシュ・カプーア:アーク・ノヴァ(2013)。は空気膜構造のバルーンによるコンサートホールで、内部に舞台や音響施設が配置されている。

12のコラボレーション アニッシュ・カプーア:アーク・ノヴァ(2013)。は空気膜構造のバルーンによるコンサートホールで、内部に舞台や音響施設が配置されている。

12のコラボレーション 杉浦公平『都市住宅』(1968、1969)。表紙の構図が3Dメガネを使うと立体的に見える。

12のコラボレーション 杉浦公平『都市住宅』(1968、1969)。表紙の構図が3Dメガネを使うと立体的に見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12の建築外的思考 マリリン・オン・ザ・ライン(1965)。モンローのヌード写真を原型にした雲型定規が、磯崎アトリエでは使用されていた。

12の建築外的思考 マリリン・オン・ザ・ライン(1965)。モンローのヌード写真を原型にした雲型定規が、磯崎アトリエでは使用されていた。

12のコラボレーション 横尾忠則:「歩行空間」(1986)。横尾忠則が制作した大きな陶板に、磯崎氏が街頭で広い集めたオブジェを額縁としたインスタレーション。

12のコラボレーション 横尾忠則:「歩行空間」(1986)。横尾忠則が制作した大きな陶板に、磯崎氏が街頭で広い集めたオブジェを額縁としたインスタレーション。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

磯崎新氏の世界が広がる3階の会場。映画『間:竜安寺石庭の時/空間』(監督:飯村隆彦、1989)など、随所に貴重な映像が映し出されている。

磯崎新氏の世界が広がる3階の会場。映画『間:竜安寺石庭の時/空間』

(監督:飯村隆彦、1989)など、随所に貴重な映像が映し出されている。

 

磯崎新(いそざきあらた)

1931年:大分市生まれ

1954年:東京大学工学部建築学科卒業。

1964年: 磯崎新アトリエを設立、現在に至る。

大分県立中央図書館をはじめ、60年代に大分市に集中して実現された建築群、90 年代には、京都、奈良、バルセロナ、ベルリンなど国内外各地、今世紀は中東、中国、中央アジアをはじめとして数多くの作品を発表。60年代から最新作まで、どの思想領域にも属さない個人的な思考と空間の展開をして、政治・社会・文化に深く觝触しながら建築において開示してきた。半世紀を越えるその活動は、思想、美術、デザイン、音楽、映画、演劇など常に建築の枠組みを超えて、時代や他領域を交錯する問題提起を生み出している。

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