デザインインフォメーション
気鋭の写真家、初の大規模展覧会
『宝箱 - 齋藤陽道 写真展』
「あらゆる存在が、たいらに並んでいる境地を見たい。みんな万物のなかのたったひとりでしかないという認識にまず立ち戻って、そこから再び始まるものを信じたい」(齋藤陽道)
「ありのまま」を写し取る
力強さとやさしさを感じさせる作品群
『宝箱』は、2008年ごろから写真を撮りはじめ、2010年に写真新世紀で優秀賞を受賞した齋藤陽道(さいとうはるみち)にとって初めての大規模な展覧会である。3.11 以降さらに独自の世界観を表現し続け、約160点のプリントに加え、200余点の作品がプロジェクターによるスライドショーで展示されている。
齋藤は、病気の人、障害を持つ人、ゲイやレズビアンなどマイノリティの人々のポートレイトを数多く撮影してきた。マイノリティであることをことさらに強調するのではなく、被写体の等身大の魅力を写し出した作品は、ときに力強く、ときにやさしく、ときに軽やかで、ときに重い。
逆光の効果を利用して、太陽を背にした被写体と光の輪が融け合うような幻想的な作品に仕上げた「絶対」シリーズや、“生きる”をテーマにした「感動」シリーズ――齋藤が見て感じた瞬間に触れたとき、ドキリとさせられるのはなぜだろう。
「MY NAME IS MINE」
シリーズより
聴覚障害の人たちが自分の名前を手話で表現している様子を長時間露出で撮影したシリーズ。
この世の現実が、あの世の夢のベールを通して見えてきます。
――谷川俊太郎 ( 詩人)
「絶対」シリーズより
2009-13年撮影。太陽の逆光によって、不思議な光の輪が浮かびあがり、その中に被写体がうっすらと浮かびあがる。
世界はとてつもなく美しく、そして悲しい。
陽道くんの目はそのことをいつも思い出させてくれる。
――よしもとばなな( 作家)
「無音楽団」シリーズより
いろいろな音の瞬間を写真で表現したシリーズ。水、波、振動、熱、まばゆさ、それらのリズムがみえる。
齋藤陽道は、懐かしさとも、新しさとも違う、今、この瞬間に僕たちが
見たつもりになって実は膨大に零れ落し続けている光の粒を虫取り網で
掴まえる男である。いや、虫なのかもしれない。
――坂口恭平( 建築家・作家・絵描き・踊り手・歌い手)