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2200年の時を経て蘇った地下軍団
特別展『始皇帝と大兵馬俑』
20世紀最大の考古学的発見と言われた中国の遺産「兵馬俑」。兵馬俑と、兵馬俑をつくらせた秦の始皇帝をフィーチャーした展覧会『始皇帝と大兵馬俑』が東京国立博物館で開催されている。始皇帝にまつわる貴重な文物を一堂に紹介、空前の規模で地上と地下に築き上げた「永遠の世界」の実像が迫ってくる。
いまにも動きそうなほどリアルな兵士の陶像
圧倒的なまでの高い技術とスケール感を満喫
本展覧会の最大の見どころは、やはり兵馬俑である。
墳丘の周辺から出土した10体の実物(さまざまな階級の兵士7体と、軍馬1体、馬の世話をする「馬丁俑」、エンターテインメントとして芸を行っていたと想像される「雑技俑」)と、70体の兵士俑の複製が展示されている。
1974年に出土した兵馬俑は、始皇帝の陵墓の副葬品だ。西安にある墳丘の東、約1.5kmの位置におよそ8000体が埋められていた。
隊列を成すような状態で発見されたことから始皇帝が率いた秦の軍団を一隊そのまま再現したものと考えられている。
ほぼ等身大でつくられた陶製の像は写実的で、表情が豊かで、一体一体に個性がある。目、鼻、口の造作、額や眉丘の張り、頬や口元の筋肉の動き、きっちりと梳いた毛髪まで精密に再現されている。
それぞれに特徴のある着衣は、地位や役割のちがいを表しているという。鎧の作りこみも、生地のひだやしわも、見れば見るほど細密だ。
まるで生きているかのような兵馬俑は、それぞれの像にモデルがいたと考えられている。兵士がひとりずつ呼ばれ、陶工の前に立ってポーズを取ったのだろうか。
目の前の像のモデルは、どんな人格だったのだろう。どんな歩き方をして、どんな声で、どんな口調で話したのだろう。
兵馬俑の精密さとスケール感に驚くと同時に、2200年前の秦に実在した「特別ではない特定の誰か」の人となりや暮らしについて、さまざまに思いを巡らせた。