デザインインフォメーション

2012.11.08

装丁という名のアート作品
「横尾忠則 初のブックデザイン展」

本好きであれば、横尾忠則がデザインした書籍や雑誌を必ず何冊かは目にした経験があるのではないだろうか。一目見ただけで横尾忠則のデザインと分かる強烈なインパクトは、読みたいという行為と同時に、ぜひ所有しておきたいという衝動にかられる不思議な魅力にもあふれている。

 

 

本や雑誌表紙が横尾忠則のアート作品そのもの

書店の書棚が展覧会場になる

 

その強烈な個性を思う存分に発揮して独自のアートの世界を築いてきた横尾忠則。グラフィックデザイナー、イラストレーターとしての才能を開花させた後、アーティスト宣言してからも、その世界観は変わらずに国際的にも高く評価されている。こうした横尾忠則が、その類まれな才能を発揮したのが本の装丁でもあった。

 

横尾忠則のポスターや絵画展は、これまでにも数多く開催されてきたが、今回、ブックデザインにだけフォーカスした展覧会は初めてとなる。会場のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)に一歩はいると、これまで横尾忠則がデザインした数多くの書籍、雑誌、豪華本が一堂に展示され、圧倒されるほどのエネルギーを間近で体験することができる。

 

記憶の中に残る思い出の本や、これも横尾忠則がデザインしたのかというように、懐かしさと再発見の連続に、本の中身を強烈に印象付ける装丁や雑誌表紙に驚かされる。まさに本や雑誌が横尾忠則のアート作品そのものであることを改めて知ることができる。

 

「装丁とはドラマティック。本に入るまでの興奮を盛り立てる役割が装丁だと思っている。グラフィックデザイナーやイラストレーターにとって、本屋の店頭は展覧会場みたいなもの」。横尾忠則が語っていた言葉だが、作家自身にしてみれば装丁も作品表現でありアートそのものであったに違いない。

 

会場には完成された本のほか、アイデアスケッチ、版下、デザイン指定紙、校正刷りも展示されている。奔放とも思える横尾デザインも、実は確固たるグラフィックデザインやタイポグラフィーの礎の上に成り立っており、造本のあらゆる側面が緻密なまでに計算されて創りあげられていることもよくわかって興味深い。

 

横尾忠則が創りあげたブックデザインの妙技を知ることができる貴重な展覧会は、11月27日まで開催中。この機会に本の中に繰り広げられる横尾コスモスに触れてみてはいかが。くしくも11月3日に「横尾忠則現代美術館」も兵庫県神戸市に開館。しばらくは横尾忠則旋風が吹き荒れそうな気配だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』 1967

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横尾忠則『未完への脱走』1970

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柴田錬三郎、横尾忠則『絵草紙 うろつき夜太』 1975

 

 

 

 

 

 

 

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