デザインインフォメーション
ものづくりという枠組みを超えて
今後の社会におけるデザインの役割に気づかされる
展覧会場で圧巻なのは、大きな球体の「マイン・カフォン」だ。
オランダ在住のアフガニスタン人デザイナーのマスード・ハッサーニの作品。この作品は地雷撤去ボールである。作家の幼少時代の体験をもとにつくられ、地雷撤去に対し、新しい手法を考えた。竹とプラスチックでできたこの装置は、風に吹かれて地面を進み、地中の機雷を安全に爆発させる仕組みだ。
現在も実用化に向けて開発を進めているという。まさに社会が抱える問題を解決しようとデザイナーが読み解き、新しい関係を築く提案ともいる。社会の不均衡や倫理を問い直す活動を、デザインで表現した作品といえるだろう。
食をテーマにしたものも作品となって展示されている。
ジョセフィン・ヴァリエの「リビング・アーカイヴ」だ。母国スウェーデンと日本からパンを焼くための天然酵母を集めて、その酵母にまつわる個々のストーリーや知識をアーカイブし、それを展示して共有することを試みたプロジェクト。
ビンに入った天然酵母が数多く並べられた展示は、ここはキッチンかと思わせるような光景だが、そこにはデザイナーの意図が込められた立派な作品になっている。ジョセフィン・ヴァリエは、人々、場所、オブジェクトを結びつける新たなプラットフォーム、体験、プロセスをデザインしており、いまは素材として食品を中心に取り上げているという。
最後に待ち受けているのは、とてつもなく長い望遠鏡だ。
タイトルは、まさに「長い望遠鏡」。大西麻貴+百田有希/o+hで、望遠鏡を使って視点を変える装置だ。会場内にあるほかの作品を、それぞれ肉眼で見るのとは異なった視点で観賞できる装置で、「見る」体験がより美しく、また特別なものに感じてほしいという。
視点の転換をもたらす試みの活動であり、新たな発見と驚きを与える作品だ。大西と百田は共に建築家。建築設計を中心にインスタレーションやまちづくりまでさまざまな活動に取り組んでいる。
これもデザインなのか? と思わせるような、ジャンルを超えた多くの作品を体感できる「活動のデザイン展」。
クリエーターたちの活動は、ものづくりという枠組みを超えて、今後の社会におけるデザインの役割に気づかされる。変動する世界におけるデザインの可能性を感じると同時に、デザインとは何かという原点をも感じとることができるはすだ。
2015年2月1日まで、東京・六本木の21_21DESIGN SIGHTで開催中。
21_21 DESIGN SIGHT企画展
活動のデザイン展
会期:2014年10月24日(金)~ 2015年2月1日(日)
会場:21_21 DESGIN SIGHT(東京ミッドタウン・ガーデン内)
開館時間:11:00-20:00(入場は19:30まで)
休館日:火曜日、(12月27日から1月3日)
入場料:一般1000円/大学生800円/中高生500円/小学生以下無料
*各種割引についてはウェブサイトを参照
住所:東京都港区赤坂9-7-6
電話:03-3475-2121